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『チェリまほ The Movie』を観て〜内容と感想

11月の制作発表からずっと楽しみにしていた映画をついにみてしまって、なんだかちょっと寂しい気持ちになっている。祭りの後みたいなものか。
もう一度見にいくつもりだけれど、その前に映画の内容(あらすじ)と感想を少し。
今回、劇場に行く前に最終回をもう一度見直してから行った。
ドラマからしばらく時間が空いて、その間に赤楚くんと町田くんは別のドラマでの共演もあり、映画版での二人がどんな風に見えるかかなり不安があったが、ドラマの最終回から続けてすぐに映画をみても、違和感はなかった。安達と黒沢がそこにちゃんといた。

いろいろな人が共感できるのではないか

全体として、ドラマの質感を受け継いだ優しい仕上がりの映画だった。
二人が、二人だけの楽しい恋人関係を楽しむというところから、自分の周囲の人たちに正式にこの関係を知らせ、堂々と正式なパートナーとして生きていくことを選んで歩み始めるという流れ。

映画を観ているときは普通に『チェリまほ』の二人の恋物語としてみていてた。パートナーが同性であるということに対する周囲の人々の壁の高さを乗り越える安達と黒沢の物語としてみていたわけだが、あとで振り返ると、ただ単に『チェリまほ』の二人の物語としてだけでなく、交際や結婚を周囲に反対されている人たちには広く共感を得られる内容なのかと感じた。
周囲に交際や結婚を反対される理由はいろいろある。年齢差、職業、経済状態、過去の経歴、相手の親の何かしらの事情、国籍・・・。
反対している周囲の人の理解を得て正式なパートナーとして認められ祝福してもらえるようになるには、チェリまほの二人のように勇気を出して、ときに何度でも、話を聞いてもらうしかないのかもしれない。これはチェリまほの二人の特別な状況ではないのだろうと感じた。その意味では、主演の二人のファンでない、またBLに興味がなくても楽しめるのではないかと感じた。


あらすじを少し


恋人同士になった二人は、何気ない日常を幸せに楽しんでいたが、突然の長崎転勤とそこでの事件が、二人の関係をより強いものにした。
黒沢は、安達を思うが故に二人離れて暮らす寂しさや不安を隠し通してきたが、ある日突然襲ってきた”安達を永遠に失うかもしれない”という恐怖と不安の中で、自分の気持ちをコントロールできなくなっていく。そして、自分が安達の前で完璧で格好よくいるということは、安達を失うかもしれないという恐ろしい現実の中では何ら意味を持たなくなり、弱くて自信がなくいつも安達を求めている自分の本当の思いをしっかり伝えたいと思う。
安達は、なりふり構わず自分に深い愛情とともに心の弱さもさらけ出してくれるようになった黒沢への強い愛情を改めて実感し、人としてさらに優しく強くなる。

二人がずっと一緒にいられるために、一番大事な時に一番近くにいられるように、二人の関係を二人だけの秘めたものにしておいてはいけないと考え、行動をとる。
そして、二人で人生を歩み始める。

このような流れは、彼らの物語としてだけでなく、恋愛に悩む多くの人に共感を得られるものかと思う。

心に残っているシーン

セリフはうろ覚えなので、間違っているかも。
1回目見た時点での心に残ったシーン。

柘植と湊
私はドラマの柘植が大好きだったが、今回映画を観てさらに湊も大好きになり、柘植と湊の関係にもとても惹かれた。

  • ある時柘植が湊に、もっと一緒にいたい、お別れするときに寂しい、一人でいるのは寂しい、「一緒に住まないか」と気持ちをぶつけた。このちょっと不器用でストレートなところが柘植は本当に素敵だ。そして、その溢れ出る気持ちと言葉を、ちょっと驚いてそして心動かされながら聞く湊の表情が、とっても優しくてよかった。一途な柘植の気持ちを、湊はいつもふんわりと包み込むように受け止めてくれる。若いのに、やるわね。

  • 初詣に来ていた安達と黒沢に、柘植と湊がばったり出会う。湊にデレデレニヤニヤの柘植にツッコミを入れた安達。そんな二人のやりとりに、「安達さんとイチャイチャしちゃってさ・・・」とちょっとヤキモチを焼く湊。そのヤキモチが嬉しくてまたデレデレする柘植。確かに湊は可愛いが、先生はデレすぎだ。
    そうなんだよ、湊!安達と柘植は、なんかこうイチャイチャしてる感じだよ。それに気付いてしっかりクレームつけた湊は流石だわ。
    デレデレ作家は基本あなたのことしか頭にないけど、時々言ってやった方がいいわ。

  • 喫茶店で。安達から送られてきた長崎の職場での写真を、柘植が湊に見せる。安達の顔がガチガチの真顔だと湊がコメントすると、「緊張すると、この顔になるんだ」と柘植。昔から・・・っていうことよね。そういう言い方がね、ほんのちょっとだけ引っかかるのよ、今の恋人には。イチャついてるとまでは言わないけど、なんか自分の知らない二人の長い付き合いを言外に匂わされている感じがね〜。
    別れるとき、「まだ来たばかりじゃないか」と言った柘植に「作家には孤独が必要」と言って、よい作品作りの邪魔にならないように帰っていった湊。獅子の子落とし的な行動をとる湊は、もはや愛深きママ(飲み屋のじゃありません)。湊ママ、寂しがり屋な将人をよろしく。


安達と黒沢
二人の仲良しシーンはたくさんあって、どれもほんわかと優しくていいですが、ここではそれ以外。

  • 応援するから転勤話を引き受けるようにと、安達を説得する黒沢。これから二人でどんな楽しい毎日を過ごそうかと、初詣の時にあんなに楽しそうに話していた黒沢なのに。転勤話を勧める黒沢を見て、これは本心なのか、今何を考えているのか知ろうと、前を歩く黒沢の背中に恐る恐る手を伸ばす安達。振り返りそれに気づいた黒沢。この二人の間に流れたなんともいえない緊張感、気まずさ、戸惑いを二人がとてもよく表していて、辛いけどいいシーンだったと思う。

  • やっと安達に会えた黒沢が、離れていた心のつらさを正直に安達に伝えたシーン。安達を永遠に失うかもしれない不安と恐怖に押し潰されそうだった黒沢はすっかり弱っていて、いつもの完璧イケメンとは別人だった。心身ともにこんなに弱って涙を流す黒沢を見たら、安達でなくても”よしよし”と撫でてあげたくなります。
    このシーンについては、他にも思うところがありました。

  • 両家の両親に挨拶に行ったシーン1。
    安達の家の玄関で、並んでたつ安達と黒沢を見た家族が「紹介したい相手って、この人?」といった感じでしばし沈黙。黒沢が思い切って短く挨拶をすると、安達の弟のお嫁さんと可愛い娘さんが「キャー!」と明るい声をあげて喜んだ。なんだろう、おもしろ。絶世のイケメンが喋ったから?

  • 両家の両親に挨拶に行ったシーン2。
    黒沢家のリビングで。まだ、息子の恋人の存在を手放しで喜べない黒沢の母。二人の話を聞くうちに、「優一、変わったわね・・・。(安達を見て)あなたが・・・、変えたのね。」の後の涙ポロリ。いろいろな気持ちの詰まった母の言葉と一筋の涙に、ジンときました。

そうそう、初日じゃないから諦めていたけど、来場者特典の葉書をいただけて嬉しかった。