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『君とゆきて咲く〜新選組青春録』(日本/テレビドラマ/2024)

踊ってるよ、歌ってるよ、新選組・・・


お化粧あり、パーマあり、ピアスあり、着物も髪型も普通じゃない。
深夜枠にやる”シン・時代劇”って何よと思ったら、こういうことか。
斬新。ここまで時代劇の枠に囚われない描き方を見ると、もはや新選組じゃなくてもよかったんじゃないかと思うくらい。なんだか訳が分からないほど斬新だった。私は原作を読んだことがないのだが、原作は手塚治虫の漫画だというから、もっと違う雰囲気なんだろうか・・・。

手塚治虫ファン、新選組ファン、幕末歴史ファン、時代劇ファンの方々は色々思うところがあるのかもしれないが、私はいずれに関してもそれほど深く極めてはいない門外漢であることもあり、最初こそちょっとだけこのドラマについていけない気分になったものの、だんだん気楽に楽しめるようになった。もうこれはこれで突っ走ればいいんじゃない?みたいな気分とでもいおうか。
ラブシーンこそないが思ったよりBL色が濃いのはびっくりしたが、とにかく何度か見ているうちになんだか楽しくなってきて、結構好きになった。

1話から11話が第一章、12話から最終20話までが第二章という構成だった。最初の頃は全体的にあまり殺伐とした雰囲気はなく、新選組に付き物の血腥さもそれほどなかったが、9話で芹沢鴨が粛清されるあたりから物語にグッと締まりが出てきた。11話の有名な池田屋事件などを経て、15話で新選組に見切りをつけて去ろうとした山南敬助が切腹させられてから、理想と現実にそれぞれの隊士たちが悩むようになり、また物語全体に幕末の混沌と暗さが増して、”新選組”らしくなっていった。

豪華なキャスト


深草丘十郎役・奥智哉は『みなと商事コインランドリー』の英明日香の時と変わらずかわいくて、青年らしく勇ましそうに振る舞うほどにどこか儚い色っぽさがあった。『君には届かない』の鎌切大作役・前田拳太郎も綺麗な顔にスラリとした容姿、そしてあまり感情ののらない声と話し方が架空の人物という設定に合っていた。この二人のやりとりも時に若干BLよりだったのは驚いたが、基本的に二人の間に恋愛要素はなく、美しく絵になる二人のブロマンスだった。
主演の二人はブロマンスだったが、新之丞(杢代和人)南無之介(羽谷勝太)の関係はかなりBL色濃いめに描かれていた。温室育ちのか弱く美しいお姫様と命をかけてその姫を守る騎士のような雰囲気だった。

この他にも『美しい彼』の高野洸、『好きやねんけどどうやろか』の簡秀吉、『クールドジ男子』(これはBLじゃないけど)の藤岡真威人など豪華な顔ぶれが以前の役とは全く違う顔を見せてくれていて楽しい。BLドラマファンの顔がほころぶ豪華な顔ぶれだった。
このほかの出演者は私は知らない人が多かったが、永田崇人、柊太朗、庄司浩平(そういえば、この間見たドラマ『絶対BL・・・』に入院中の高校生役で出てた!)など、みているうちにみなそれぞれタイプが違う魅力が出てきてかっこよく、眼福だった。

まず、近藤勇役の高野洸くんがカッコよくて嬉しかった。
私の中では、高野くんといえば『美しい彼』の小山。なかなか小山と切り離せない。高野くん自身は別にかわいそうな人ではないのだが、私の中ではあの平良にフラれた、そしてその後劇場版『美しい彼』でもまだその平良に儚い想いを寄せ、目立たぬように大事な時に彼をサポートしてやっていた小山がなんとも不憫だった。だから小山に幸せになってほしいとずっと思っており、演じていた高野くんにもつい「幸せになってほしい」と思ってしまいがちだった(別に高野くんはかわいそうでも不幸でもないのに)。
今回近藤勇として高野くんが登場した時、その切れ長の目と引き締まった表情と声のカッコよさに惚れ惚れし、なぜか「平良よ、あんたが振った男はこんなに美しくてかっこよかったのよ!」と、よくわからない感想を一人抱いて、テレビの前で満足した。

土方歳三を演じていた阪本奨悟は、最初の頃は美しいけれどあまり存在感を感じなかった。儚げな美人という印象だったが、途中からその美しさに鬼の副長としての悲壮な覚悟が加わり、人物像に厚みが出てとても魅力的になった。やけに歌がうまいと思ったら、シンガーソングライターだった。

芹沢鴨役の三浦涼介は、カラーリングにパーマにピアスにメイクもバッチリ着物も独特、全く時代劇とは思えないいでたちで、芝居もかなり癖のある感じだったが、今回のこのファンタジーのような時代劇にはあっていたと思う。芹沢鴨最後の殺陣のシーンはキレと迫力があり、彼の最期は見応えがあった。そんなに好きなわけではなかったのに、芹沢がばったり倒れたときには、なんだか一つの区切りがついてしまったようで、寂しくなった。癖が強くてあんまり好きじゃないと思っていたのにいつの間にかクセになって、ないと物足りない。まるでフォーに入っているパクチーのようだった。

第二章から伊東甲子太郎役で駒木根葵太が出てきて、ちょうど『25時、赤坂で』を見終わった直後ぐらいで、びっくりした。羽山麻水同様の物静かでどこかミステリアスな感じはよかった。

自分の命をかけて何かを成し遂げようとしたときに、それが本当に正しいのか、誰かを傷つけないのか、他人の命を犠牲にする価値はあるのかなど、今も戦火の絶えない世界中で人々が直面している生々しい問題ではある。このドラマがそこに答えを出したわけではないけれど、結局二人が互いに殺しあうことに背を向けて離れた結末は私には意外で、そういう選択もあったか・・・と考えさせられた。丘十郎と大作は別々の道を選んだが、二人が命を落とさずに別れられたのはよかったと感じた。もしそれそれに幕末を生き抜ければ、価値観がガラリと変わった新しい明治の世の中で、また二人は出会えるかもしれないのだから。

最後に歌の話です。
1章と2章それぞれにオープニングとエンディングの曲を”キミユキ”としてメンバー達が登場人物の姿のまま歌い踊っていた!
私は1章のオープニングも好きだったけど(暗闇で舞い踊ってるのが袴姿の出演者たちだと気づいて好きになった)、特にエンディングが好きだったなぁ。昔のアイドルの歌みたいで、明るくてダンスも面白く、最後にみんなで ”投げキッス” ですよ。これを見たときに、あ、このドラマはもう我が道を行くんだなぁと思って、時代劇や新選組モノの型に嵌めなくていいんだと思えました。

型にはめず枠に囚われず自由な気持ちで見られれば、楽しめる作品だと思います。



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