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『マイ ストロベリー フィルム』(日本/テレビドラマ/2024)

2022年からBLドラマを2年にわたって放送してきたMBSドラマシャワー枠の最後の作品。漫画や小説などの原作があるものをドラマ化することが多かったが、これは昨年同時期に放送された『ジャックフロスト』に続くオリジナル作品。
BLドラマもいくつものテレビ局で制作せれるようになり、BLドラマ専門としてのドラマシャワー枠の存在感は薄れていたかも知れない。でも、この2年ずっとBLドラマを世に送り出してくれたことはとても嬉しかった。

スマホを使って一人で音楽を作るのが趣味の大人しめな高校生・市川凌役に深田竜生、そのクラスメイトで明るく元気な凌の親友・遠山光役に矢花黎。同じくクラスメイトで、以前からずっと凌を好きで見つめ続けてきた中村千花役に吉田美月喜、3人が偶然見つけた古いフィルムに映っていた謎の美少女・村崎美波に田鍋梨々花。
凌は光に密かに淡い恋心を抱いているが、光は全く気付いていない。二人はどこからみても普通の友達同士だ。
BL要素もあるけれど、女の子も絡んでくるストーリーということで、どんな展開になるのか予想がつかないまま見始めたが、これはいいお話だったと思う。
BL要素は薄めで、周りの誰も気づかないほどの凌の淡い恋心が切ない感じでよかった。個人的には、凌のボソボソ話す暗めな雰囲気が好きだった。
また、とてもよかったのは女の子二人がBLストーリーの添え物ではなかったところ。しっかり存在感、個性があったことで、高校生4人のゆらゆらと形の定まらない恋と友情がバランスよく描かれていたと思う。

凌の光に対する気持ちも切ない感じがしたが、私は千花の凌への気持ちも同じくらい切ないものだと感じた。自分の好きな相手が誰を見つめているかわかる。そしてその彼が好きな相手に気持ちを打ち明けることなどできないと悩んでいることも知っている。自分が凌を好きだからこそ、凌のつらさがわかりすぎる千花。ずっと好きだった凌から付き合おうかと言われたときの、千花の複雑な気持ちや反応もうまく描かれていた。

また、美波は光に好意を寄せられているが、光の気持ちには自分らしく対応する。恋愛に対する自分の考えがはっきりしていて、時にちょっと扱いにくいほどに愛想なく振る舞ったりするが、媚びることなく自分に正直な感じがしてよかった。
BL要素も盛り込みながら、女の子二人がとてもいい役割を果たしていたと思う。
私はこの女子二人がすきだった。

ラストの凌と光のシーンも、この数年のBLドラマブームの中では稀にみる控えめな感じが、切なく、とても素敵だった。
光の手に自分の手を重ね、淡い恋心を控えめにやっと伝えた凌。指を絡めるのではなく、まるで小さなこどものようにその手をギュッと握り返した光の気持ちは、恋ではないだろうと私は感じた。
凌の気持ちには応えられなくても、その気持ちから逃げず、これからも大切な凌と一緒にいよう、という強い思いを感じた。求める関係は違っても、気持ちは通じ合っていた。

この2年ほどドラマシャワー枠のBLドラマを見てきたが、その中では昨年の『ジャックフロスト』とこの『マイストロベリーフィルム』という2本のオリジナル作品が個人的にはよかったと思う。

量産するには原作がある方が作りやすいのかも知れないが、量産しなくてもいいので、こんな素敵なオリジナルBLドラマを今後もまた見てみたい。

ドラマシャワー、たくさんのBLドラマをありがとうございました。



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