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【映画レビュー】ハリエット

映画「ハリエット」で奴隷の逃亡を追体験する

ハリエット・タブマン。

その名前を、私は知らなかった。

メリーランド州の奴隷に生まれ、一人でペンシルバニア州への逃亡に成功。その後、他の奴隷の解放を導く「地下鉄道」の「車掌」として活躍した女性だそうだ。

「逃亡奴隷」ということを歴史の事実として知っていても、実際に「逃亡する」というのが物理的にどういうことなのか、ほんの少しだけれど追体験するかのように感じながら知ることができただけで、この映画を観た意味はあった。

ほんとに走って逃げるんだな… 川があったら溺れるかつかまるか、渡れたら奇跡なんだな… など、改めて、「自由か、死か」という選択の末の無謀な試みだっただろうことが本当に分かった。

ハリエットは笑わない

この伝記映画で描かれているハリエットに私がびっくりしたこと。

それは…

「ハリエット、笑わないなあ…」

ということ。

そこかしこで助けてくれたり心配してくれたりする人たちに対しても、ニコニコ笑ったりしない。

そして、恩義があるからと自分の主張をためらったりしない。自分にも非があるかもと思って感情を抑制したりしない

そんな、反・愛されキャラなところもハリエットのカリスマ性を高めているのだろう、彼女を信じ、支持する人は増えていく。

もちろん最初から支持者がいたわけではない。

なにしろ奴隷、そして女。

彼女が「神の声を聴ける」ということが、一つの大きな説得力だったように見えた。

昔受けた傷の後遺症で、ハリエットは時々、突然意識を失う。この時に、神の導きが見える、というのだ。映画には、そうして危険を察知して、親族を無事に脱出させることに成功させるエピソードが出てくる。

それが偶然だったのか、何らかの能力だったのかは分からない。でも、「神の声が聴ける」ということは、まだ実績のないころのハリエットの信用を高める重要な要素だったかもしれない、とは思う。

女主人がハリエットを捕まえて「ジャンヌ・ダルクのように火あぶりに」しようと言うけれど、まさにジャンヌ・ダルクも「神のお告げ」に従った女性だ。

ある時代と社会で「障害」であることが、ある時代と社会、状況下では価値になる。

そんなことを感じた。


アメリカ映画のお供に超おすすめの本

この映画を観終わって、まず手に取ったのはこの本。アメリカが話題になったとき、すぐに見られるように手に取りやすいところに常備している。

「州図鑑」みたいな感じ。各州の特徴がイラスト入りで分かりやすく書いてあって、何かで州の名前が出てきたときに、どこにある、どんな州かということをすぐに調べられるのでとーっても便利!

州の名前だけ聞いても、イメージがわかなくて全く覚えられなかったけど、この本があれば少しずつ覚えていけそう✨

ところどころに書かれているコラムもおもしろい。そして、黒人やネイティブ・アメリカンに関する記述が多い気がする。「地下鉄道」についても書いてあり、メリーランド州のページには「英雄」としてハリエット・タブマンが書かれていた。

(ちなみに、この本のコラムで、昔は民主党が奴隷制度を支持する南部を基盤としていて、共和党は北部で奴隷制度反対だったと知った!今の民主党=リベラル、共和党=保守というイメージと真逆…!そこからどうやってお互いに影響し合いながら変化していったのか?政治っておもしろい…!)

映画を観ていて一人テンションが上がったのは…

ここからはミーハーな話😎

映画『ハリエット』にはもう一人、大事な黒人女性が登場する。生まれながら自由の身で、元奴隷の女性たちに住処を提供するマリー。

かっこよくて美しいマリー。演じているのはジャネール・モネイだった!

前に観た『アメリカン・ユートピア』で、ディヴィッド・バーンがカバーしていた"HELL YOU TALMBOUT"のアーティスト🎤

↓『アメリカン・ユートピア』に感激して書いた記事はこちら!


こういう、偶然の符号はうれしい

世界が広がる喜びが、そこかしこにある

幸せ。



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