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変わる若者と、変わらない大人

海外でビジネスをしていると、日本人留学生や、日本の大学生とかがコンタクトをくれることが時々ある。キャリアの相談や、一度話を聞きたい、など。とてもありがたいことだ。

「留学生の統計」などを見ていると、絶対数としては海外で勉強する人がどんどん増えているようだ。「若者の内向き志向」なんて言われるが、こういう数字を見る限り僕は逆の傾向を感じる。「海外インターン」という言葉はもはや珍しくもなんともなくなった。

僕が大学生だった頃は海外インターンなんて考えもしなかった。この20年で大学生は急激に国際的になり、また社会との接点を持つ学生が増えたのではないかと思うと、とても頼もしい気持ちになる。

ところがそうした学生が日本で社会人になり、企業に就職する。その中には、少なくない割合で「日本的組織」に幻滅しショックを受けるケースがある。そして転職しようか、やっぱり海外がいいのでは、という相談を今度はもらうことになる。これはとても残念に思っている。

基本的には僕は「石の上にも3年」と考える人だ。どんな環境であれ、学べることがある。自分の価値観と合わない環境であればこそ、世界が広がることも沢山ある。そういう経験は若いうちしかできない。

自分も最初にメーカーに入社した頃は、ジャンパーを着て営業車で小さな商店を回ることから始まった。話の通じない相手や、中にはとても泥臭い仕事もあったが、その経験は自分の基礎となっていると思う。

そういう自分の「幅を広げる」経験が出来るのは本当に貴重だ。そして、一度自分が選んだ就職先なのだから、その決断に責任を持ち、ある程度までやりきらないと、逃げ癖がついてしまうとも思う。

とはいえ、リーズナブルな苦境であればよいが、最近は「辞めたくなるのも無理もないよね」と思うような話を結構聞かされる。

・あきらかに非効率で昭和的な社内プロセス 
・毎日深夜まで強制的に飲みに付き合わされる
・大声で罵倒するようなパワハラ職場
・危機感や向上心がなく、勉強しない先輩、上司

こういう話が枚挙にいとまがない。

20年前であれば、「それも社会勉強だよ」と言えたかもしれない。でも今の時代背景を考えると、本人の成長につながるどころかむしろマイナスでしかない。

とりわけ社会人の最初の数年は、習慣を作り成長の角度を決めるための大事な期間だ。そういう、いわばゴールデンタイムを前時代的な職場で過ごすのはキャリア上もとてもリスクがある。

こうした非効率に付き合わせられている間に、世界でインド人や中国人は必死で勉強して学位を得たりスキルを磨いているわけで、国際的な常識と比較してもおかしい。僕の周りの新卒のタイ人はびっくりするほど優秀だし、朝も夜も勉強していて自己成長に余念がない。

人間、年をとればとるほど変化しづらくなる生き物だ。また、情報の感度も低くなるので変化に鈍感になり、変わらなければよいと思ってしまいがちだ。そういう上司が前時代的な価値観を振りかざすのは、メカニズムとしては理解できる。それでも残酷なほどに世界は変わっている。少なくない日本企業と日本人は、向こう10年で間違いなくやってくる環境変化に対応できなくなるのではないか。

せっかく国も一定の予算を割き、また様々な教育機関が育んだ若者のチャレンジ精神と国際意識を、一部の変われない組織と上司が削いでしまうようなことがあってはならない。大人こそもっと変わらなければならない、ということをもっと声高に言い続けないと、と思う。もちろんそこには自分も含まれる。

そして、「石の上にも3年」派の自分だったが、もし成長欲求の強い若者が環境とのアンマッチを感じるようであれば、「別の環境を探すべき」というアドバイスをすることは今後増えていくように思う。


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