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兄弟姉妹という名のリスク

最近どうも親の様子がおかしい。
もしかして認知症?

要介護状態になって、やがて施設に入って…。
認知症になった場合、療養期間は7年から8年。
中には10年以上生きる人もいるって聞いたぞ。

これから慣れないことがいろいろと起こるんだな。
身の回りのことに介護や医療、エンディングもそうだ。
仕事や家庭に加えて、親の介護?
そんなん無理に決まってるっしょ!

いや待てよ。
おカネはどうすんだ!?
親名義の預金を使えるようにしておかなきゃだな。
キャッシュカード預かって、暗証番号教えといてもらわないと。
10年もの間、オレが立て替えるとかあり得ないし。

そう言えば、下手に親がボケたなんて銀行に知られたらヤバいって、何かに書いてあったぞ。速攻で口座が凍結されるって!
実の子どもでも、親名義の口座からは一円たりとも引き出せないって!
そりゃマズいっしょ。

親がちゃんと理解できるうちに、きちんと話して段取りしとかねば~っ!


『ゲゲッ。他人事じゃないよぉ~っ。わたしもだっ!』……なぁ~んて、と思った人がいたとしたら……、そんなみなさんに今回の記事を書いていきますね。


親が認知症になってしまったら、介護サービスの利用料、介護切に入るとしたら入居金や月々の支払い、入院なんてことになれば医療費もあるし…。あと、いろんな手続きのために役所とかにも行ったりもします。とても大変そうですよね。

いずれにしても、おカネと時間がかかりそうだということは想像できると思います。
介護休業を取得した人たちは、ほぼみんな後悔しています。勢いで介護離職なんてしちゃった人たちは、介護が終わった後も再就職は困難です。
自分だって歳を取っていくというのに、フリーターや派遣暮らししていかなければならないというのは、ちょっとキツいと思います。

となればこれはもう、『覆水盆に返らず』となる前に『転ばぬ先の杖』を用意しておかなければなりません。面倒だからって先送りしていると、本当に親の判断能力が完全消滅してしまって、成年後見人をつけなければならなくなってしまいます。

そうなったら最後、親のおカネを自由におろせなくなるだけでなく、後見人に毎月5万円前後の報酬まで払い続けなければなりません。親が亡くなるまでずぅ~ッとです。おカネを下ろしてほしいと言えば使途を訊かれ、過去に親がおカネをもらってないかとか調べられて、完全に赤の他人の管理下におかれることになってしまいます。

なので、銀行員も弁護士も、お客やクライアントには後見制度を進めるにもかかわらず、自分は決して後見人なんてつけることはありません。世の常として、それを売っている人は、決してそれを買わないのです。ちなみに、1,000万人とも言われる認知症患者のうち、後見制度を利用している人はわずか24万人にも届きません。

実際問題として、親名義の預金口座を(成年後見人ではなく、他の兄弟姉妹でもなく)自分の管理下に置くための方法としては、消去法にはなりますが、民事信託という手続きしかないのかなぁ~と思っています。世間的には、『家族信託』と呼ばれてますが、別に家族でなくても構いません。ガチで信頼できる人であれば、それこそ赤の他人でもOKです。要は、(親サイドから見て)自身の老い先を託せる相手との間で信託契約を交わすわけです。

契約とかいうと、なんかムズッ…ですよね。
なので、ふつうは親がヤバそうになったら一刻も早く、定期預金を解約して普通預金に振替えて、キャッシュカードを子どもが持つ…。これがいちばん簡単です。 ちなみに、定期預金の解約は本人がいないとできませんから、親が認知症になってしまう前に、普通預金に振り替えるのは必須です。

ただ、兄弟姉妹がいる場合には、すべてをキチンと話して理解を得るか、慎重に事を運ぶかのいずれかを選択する必要があります。ひとりっ子であればノープロで、親に感謝感謝です。
でも、子どもが複数いるとなかなかハードルが高いですね。おカネが絡んでくると、日頃は中のいい兄弟姉妹でも微妙な空気感になるものです。あざとい配偶者がいたりすると、さらに話が厄介になっていきます。そうして行きつく先は争族(あらそうぞく)です。

だから、とりあえずは親の近くに住んでいる子どもか、親がいちばん思い入れの強い子どもにキャッシュカードを渡しておくわけです。

ところで、銀行に親の認知症がバレるきっかけで、いちばん多いのはなんだか知っていますか?

なんと、自己申告です。

子どもが親のキャッシュカードでおカネをおろそうとして、カードの磁気損傷でATM操作の際にエラーが出てしまう。『窓口にお問い合わせください』というメッセージに従って事情を話した時点で、親の認知症がバレるわけです。で、即、口座凍結です!

他人事の銀行員は、マニュアルどおりに成年後見制度をガイドしてきます。こうなってしまったら最後、子どもは二度と、親名義の口座に手をつけることはできません。まさに、一巻の終わりです。不条理な不自由な日々のスタートです…。

いま現在、親のキャッシュカードを預かっているみなさん。まずは、銀行でくれる通帳保護のためのビニールカバーがありますよね。あと、キャッシュカードのやつも。いまさらかもしれませんが、邪魔だと思っても、常にあれに入れておくようにしてください。捨てちゃったという人は、(取引のある)銀行に行ったときに多めにもらうようにしてください。タダですから。

こうして親名義の口座からちょこちょこおカネをおろして、それを自分の口座に移しかえていくわけです。ただ、私たちのすべての銀行取引情報は国税に筒抜けですから、一定のサイクルで一定の金額が、同一口座から同一口座に送金されてたりすれば、脱税行為検索で引っかかってしまいかねません。アトランダムに現金を引き出して、その金額と異なる金額を自分の口座に入金することが重要です。できれば、念には念を入れて、引き出した日とは別の日がいいですね。このあたりは、国税とのイタチごっこなのです…。

例えば、今日198,000円を現金で引き出して、数日後に165,000円を自分の口座に入金する…みたいな感じです。70歳以上でトランザクションが少ない口座については、一回の出金上限が20万円までにブロックされている可能性があるからです。

おそろしい話ですが、本人には何の断りもなく、勝手にそんなことをされちゃうわけですから不条理極まりないのですが、『であれば窓口で出金手続きをしてください』となって、事情聴取されて、銀行員が問題なしと判断すれば、そこでようやく現金を手にできることになります。

でも、口座名義人本人であってもこうなのですから、例え実の子どもであっても折衝は難航します。『今ここから名義人に電話しろ』とか『委任状を用意しろ』とか、本当に面倒なのですが致し方ないのが令和の世の中なのです。

さて、キャッシュカード預かりで親名義の口座残高がゼロにすることができたら、めでたしめでたし。要は、預金高が少ない場合には、この作業もそんなに苦にはならないということになるのですが、問題は1,000万円を超すような金額の場合です。

すべて口座間移動させる前に親が完全なる認知症になってしまうかもしれません。そうなってしまったら、子どもの手元に親名義口座に手をつけてもいい根拠がなければ違法行為になってしまいます。その根拠として、前述の信託契約があるわけです。後でゴチャゴチャ言われないように、公証化しておきたいところです。要は、公証人役場に行って法的に認められる文書体裁にしてもらうということです。

さて、信託をおすすめするケースは、何といっても『親が施設に入って、もう実家に戻ることはないので売却をしたい』。これです!

親が施設に入るときは、おそらく認知症です。管理も大変だし、施設費の捻出もあるから、空家になった自宅を売却したい。でも名義人でなきゃ売ることはできないので、信託契約を根拠に子どもが売れるようにするわけです。

これには民事信託が実に有効です。で、売却したお金は、その後も受託者である子どもが管理して、親のために使えますからね。しかも、信託では設定時に不動産取得税も非課税ですし、売却したときの譲渡所得税の3000万円の特別控除も使えます。税金的な優遇もありますよね。

というわけで、売却したい不動産があるときは信託ですね。

ただし、兄弟姉妹がいる場合は、やっぱり話はそう簡単にはいきません。私はこの仕事をしていてつくづく思うのです。「自分はひとりっ子で本当によかった」と…。両親に感謝してもし尽くせません。

ひとりっ子じゃない場合には、親名義財産の認知症対策は慎重かつ戦略的に進めなければなりません。いろいろとウザい配偶者がついてるときも要注意です。人間関係や世帯状況、それに経済事情も考慮しながら作戦を立てていくことをおすすめします。どこまでのことを共有して、どこから先のことをあえて伝えないでおくか…。このあたりの塩梅(あんばい)が厄介です。

テーマ的には、これ以上のことをネット上で文字にすることはむずかしい……。あるいは、控えたいと言ったほうがいいかな。


今回は、親名義財産の認知症対策と、兄弟姉妹について、私の実感をお話しさせていただきました。なんか、とっても残念な結論になってしまったことをお詫びしておきますね…。ゴメンナサイ。


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