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何年振りかで、一週間もの長期にわたって横浜を留守にし、久々に安息の場、ドトールの珈琲農園でこれを書いています。

13日(金)・14日(土)と、認知症専門医の学術大会@神保町。
15日(日)~17日(火)は、取引先老人ホーム@岡山。
夕方に一旦自宅に戻って取材を受けて、
18日(水)~20日(金)が、取引先クリニック@三重。

近鉄特急と新幹線で、わが阪神タイガースの日シリ進出を見守りながら帰濱した次第です…。

出張中のいちばんの収穫は、経営感度のいいドクターとの出会いがあったことです。昨夏は日本で唯一の開業医の学会でお話しさせていただき、今秋は念願の精神医学会での教育講演を仰せつかりました。

今回のテーマは『高齢者が被りやすい詐欺および商取引・社会生活上のトラブル』というもので60分、いつものように好き勝手させていただいたのですが、終了後の名刺交換でステキな邂逅があったわけです。

ひとりは、共同通信社の女性記者の方。この10年さまざまなメディアとおつきあいしてきたのですが、同社はどうしても辿りつくことができなかった、日本のメディアの元締めのような存在です。

ひたすらプレスリリースを送っても相手にしてもらえなかった相手でしたが、学会のおかげで、あちらのほうから寄ってきてくれたのですから超ラッキーでした。

で、もうひとり。会場となった教育会館のエントランスホールで、「お待ちしてたんですよ。無理勝手を言いますが、このあとちょっとだけお時間を戴けませんか?」と声をかけられたのが、私の話を聴いてくれて、私に関心を持ってくれた開業医の方でした。

千葉で開業している彼は、講演の主題とは別の、私のプロフィールと話しっぷりを気に留めていただいたそうで、そんなふうに言われたらおつきあいしないわけにはいきませんよね(笑)。

懐石をつつきながら麦焼酎をしこたま堪能し、すっかりご馳走になってしまいました。でも、うれしかったのはそこではありません。私がずっと叫び続けてきた『2025年に地域で生き残る開業医モデル』に完全同意してくれて、これから新しいビジネスが形になっていくことが決まったからです。

このあたりのことは、本年8月4日付けの記事『高齢者が生きづらい世の中を円滑に生きていくために!』に詳しく書いています…。

来年2024年は、ドクターの収入源である診療報酬のマイナス改定がほぼ確定なのに加え、2025年問題で患者減も必至です。もちろん、コロナショックですでに打撃を被っているわけですから、まさにトリプルインパクトの嵐に見舞われているのが開業医の人たちなのです。

昨秋以降は中小企業向けの介護離職対策に全身全霊を打ち込んできた私ですが、彼と巡り合ったことで、本来の地域医療のフィールドでも今一度、驥足を展ばす(きそくをのばす)ことができるのは本当にありがたいことです。

相談援助のプロ・社会福祉士としてのみならず、医療経営を革新する医業経営コンサルタントとしても、誰かの役に立てることはしあわせの極みです。三度目のハタチを生きる私ですが、高齢者とされる年齢にを迎えるまでは、自分のこしを続けていけそうで喜ばしい限りです。

最後にもうひとり。岡山の老人ホームに入所されている、年末に傘寿(80歳)を迎える男性との出会いです。彼はなんと、拙著『完全なる終活バイブル』を読んでくださっており、私が提唱し続けている『永遠の親子愛で紡ぐ魔法の終活』を実践中だったのです!

これはうれしかったですねぇ~。正直、あれを理解して行動に移せるのは、老親側ではなく娘や息子のほうだと見込んでいたので、本来主導権を握るべき親の側が、人生さいごの大仕事に取りかかってくれていると聞かされた時は、まさに快哉を叫んだ次第です。

彼のビジョンを聴くと、私の推奨する代替わりの方法を完全に理解してくれていることがわかりました。四人のお子さんそれぞれを査定した結果、引き継ぐ財産は(均等ではなく)バラバラです。そして、可能な限り、贈与税に配慮しながら、今のうちから手渡していきたいと仰っています。ただ一点、その渡し方と具体的な手続きが『?』で頭を抱えていたというのです。先述の本には、そこまで詳細かつ具体的なことは網羅されていませんから当然のことです。

そして、施設長から、「近々、ヤマザキ先生、来るみたいですよ」と聞いて、待ちわびていてくださったというわけです。いゃあ、ホント、うれしいですよね!

彼によれば、一昨年までに、株とゴルフ会員権とクルマはすでにキャッシュ化を済ませており、定期預金もすべて普通預金に振替えているとのこと。彼の年齢でここまでパパッと事を運べる人はなかなかいません。感動した私を見て、彼は分厚いノートを開きながら、詳しい構想を語ってくれました。

金融資産は約7,800万円。施設に入るまで住んでいた持ち家の固定資産税評価額が約3,500万円(土地3,100万円、家屋400万円)です。相続人は四人のお子さんだけなので、子どもたちに相続税の面倒をかけないためには、まずは財産を5,400万円まで減らしてしまう必要があります(3,000万円+600万円×4人=5,400万円。これが相続税非課税枠だから)。

これらとは別に生命保険も4本加入していて、四人のお子さんそれぞれが500万円ずつの死亡保険金を受け取れるようになっています。これもまた素晴らしいです。こういうのが理想の父親だと思います、本当に!

不動産の実勢価格は、固定資産税を0.7で割り算した金額が実勢価格の目安ですから、5,000万円です。ということは、(年金と施設費用だけは別にして)現金さえゼロにしてしまって不動産だけを相続させることができれば、相続税は関係ありません。

つまり、7,800万円から施設利用料を差し引いた金額を、誰にいくらどのように手渡していくかがポイントとなります。で、不動産譲渡で得られた売却益は四人で均等に受け取ればいい…。彼はそこまで青写真を描けていたのですから、お見事のひとことです。

現在の施設は月額35万円の費用が発生します。そこでエンディングまで過ごすとします。「エンディングは何歳で迎えると思われますか?ちなみに私は100歳と決めているのですが」と尋ねると、彼は「米寿かな」と穏やかな笑顔で即答します。このあたりも、並みの高齢者ではありません。ふつうは答えに窮するものなのです。

余裕をみて、寿命を90歳と設定すると、ざっと120ヶ月分の費用が必要となりますから、『35万円×120=4,200万円』となります。なので、預金総額7,800万円のうち4,200万円は別にプールしておいて、差額の3,600万円をお子さんたちに今のうちからセッセと分与していくことになります。

四人のお子さんを仮に兄弟姉妹とすると、分与する金額は、『兄>妹>姉=弟』ということは明確に決まっているそうです。「具体的な金額を年末までに決めていきます。これもまた楽しい作業ですよね」と、何とも言えない、いたずら盛りの少年のような笑顔が印象的でした。

渡し方としては、本人に生活資金や、老後のサポート料や、孫へのお土産代や、誕生日祝いや、旅行代の補助や、学業費や…。こうした20万円程度の金額であれば、直系卑属(実の子ども&孫)にあげる分には贈与税はかかりません。

早く現金を減らすためには、住宅取得資金(1,000万円)、結婚&子育て資金(1,000万円)、教育資金(1,500万円)などがありますが、銀行に専用口座を作ったり、エビデンスを揃えたりと、ちょっと面倒なことが多いので、なるべくであれば、日常的な接触の中で都度おカネを手渡してあげるというのが理想だと考えています。

いわゆる暦年贈与(毎年110万円)も有効かとは思いますが、エンディングの日から過去7年前まで遡って相続税の対象となるため、なんかスッキリしないですよね。

彼の場合は、4人あわせて3,600万円(平均すれば、ひとり900万円)ですから、比較的簡単に現金を減らすことは可能だと思います。まだ自立歩行できているうちはATMも支障なく使えるでしょうし、第一子と第四子は月に一度は顔を合わせるようですから、その都度、本人や孫に渡していくことができるでしょう。

注意点としては、ひとりでの外出が困難になった場合です。ATMの利用履歴が1年を過ぎると、多くの金融機関が出金と送金に制約をつけてきます。迷惑この上ない話ではありますが、これが実情です。

なので、そんな兆しが出てきたら、速攻でお子さんたちと個々に民事信託契約(いわゆる家族信託)を交わすようおすすめして彼と別れました。まぁ、信託契約は別に今すぐ作成してもいいのですが…。そのあたりも含めて、年末まであれやこれやと思案を巡らすとのことでした。LINEのお友だち登録も済ませてきました(笑)。


親が自分で培ってきた財は、自分がしっかりしているうちに子どもたちに渡してしまうのが得策だと思っています。争族を回避することにもなります。
「遺言を書いておかないと争族になる」というまやかしを駆使して遺言をすすめてくる銀行や法律家が殆どですが、「遺言を書くから争族になる」という側面は確実にあるのです。誰がいくら受け取るのかが相続人全員に知られてしまうからです。差をつけても、均等割りにしても、相続人全員が納得するというケースはほとんどありません。

そもそも、自分のおカネをどう分与するのかについて、死後まで隠しておく意味が私にはわかりません。受け取る側だけでなく、渡す側にしても、然るべき想いを自分の言葉で伝えながらおカネを渡したほうが絶対にいいに決まっている…。

かつ、誰にいくら渡したのかについて、みんなに周知する必要などまったくない。財産分与は人事評価と同じ…。これが私の持論なのです。

霞ヶ関や永田町ではふつうに行われている財産承継のやり方も、一般大衆にはなかなか伝わってこないぶん理解してもらいづらいところがあります。だからこそ、たまぁに話の分かる人との出会いがあると、妙にうれしくなってしまうんですよねぇ~、これが。

ということで、読者のみなさんにとって実りの秋となりますようお祈りしております。

なお、これからは、事務局の桜井と私とで、交互に投稿してまいります。
引き続き、どうぞよろしくお願い致します。


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