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【医療マガジン】エピソード11 聖夜の奇蹟!かかりつけ医大賞(5/5)

15分後。いよいよ、『決定!2023かかりた医大賞』の結果発表のときがやってきた。
 
鶴ちゃんの若くて張りのある声が、改めて最終選考に残った3名のドクターの名を告げていく。それと同時に、中央のオーロラビジョンに各ドクターのアップ画像が順に並んでいく。
 
まずは、神奈川県茅ケ崎市の「湘南ふれあい診療所」、星野あかりドクター。
続いて、東京都武蔵野市の「井之頭全人医療クリニック」、勝田永太郎ドクター。
そして、埼玉県さいたま市の「まごころ医院レスポワール」、真田こころドクター。
 
オーロラビジョンの上には、得点版がセットされている。
 
まずは、会場に招待された観覧者100名が3者1択のボタンを押し、全100ポイントを3候補が奪い合う。続いて、百田・妃菜・華乃宮・観音寺にブレイク前のお笑い芸人6人が、3候補それぞれを10点満点で採点し、その合計ポイントが加算される。最終的に、200点満点で最高点の候補者が、2023年度のかかりた医大賞ということになる。
 
当然の成り行きではあるが…、結果は明らかだった。
 
観覧者100人の100点は……。
 
星野22ポイント、勝田59ポイント、真田19ポイント
 
ブレイク前のお笑い芸人6人による60点(ひとり10点)は・・・。
 
星野53ポイント、勝田58ポイント、真田54ポイント
 
ここまでで、「星野75、勝田117、真田73」である。
 
いよいよ、華乃宮小町、観音寺暁子、鶴田妃菜、百田寿郎の順に点数が発表される。
 
華乃宮小町 ⇒ 星野9、勝田10、真田8
観音寺暁子 ⇒ 星野9、勝田10、真田9
鶴田妃菜 ⇒ 星野8、勝田10、真田9
百田寿郎 ⇒ 星野9、勝田10、真田9
 
最終結果は、「星野110、勝田157、真田108」となった。こうして、『かかりた医賞』は、井之頭全人医療クリニックの勝田永太郎に決定したのだった・・・。
 
いやいやいや。本当にかかりたいドクターばかりが3名の最終選考に残りまして。最後のさいごまで大いに盛り上がりました。みなさん、本当におつかれさまでした~っ。
 
番組のフィナーレは、例の4人と推薦者3名、そして、ブレイク前のお笑い芸人6名が中央のステージに集まってのエンディングである。オーロラビジョンには、初代かかりた医大賞に決定した勝田永太郎が、あの日と同じブルースカイブルーのストライプのシャツにグレーのベストで軽く手を組んだ前傾姿勢で微笑んでいた。勝田を推薦した直子の立ち位置は、なんと妃菜&百田と小町&暁子のど真ん中。つまり、全体で見てもど真ん中に立っていた。
 
エンディングテーマが流れ出し、鶴ちゃんが出演者にお別れのコメントを求めた。
 
「この企画。社会的ミッション性が高くて、実にいいんじゃないですか!想像を超える盛り上がりでした。推薦者がノミネートしてくださったドクターはみんなすばらしかった。あんなドクターが増えてほしいし、そのためにも、番組をご覧のみなさんも是非、あなたの街のドクターを品定めしてみてください。それが地域医療の質を上げていくことにつながりますからね。ありがとうございました。また来年もやりましょう!」と華乃宮小町。
 
「意義ある企画のメンバーにしていただいて、本当に感謝しています。今回が初めての試みでしたが、これがきっかけになって、医療を利用する側も提供する側も、意識に変化が起きて、良い方向に向かっていくと信じています。ご覧のみなさんも、医療を利用する際には決して受け身にならず、ご自身の健康はご自分でまもるんだという自覚をもっていただけたらと思います。どうもありがとうございました」と観音寺暁子。
 
「私が『しらこわ』に携わらせていただくようになって最大規模の企画ということで不安もありましたが、それをはるかに超える、楽しくて面白くて充実した番組になったのではないかという予感がしています。推薦者のみなさんもすばらしかったし、3名のドクターも魅力的な方ばかりでした。これをきっかけに、『かかりた医』という言葉が一般にも認知してもらえたら幸せだなぁ~って感じています。本当にありがとうございました」と妃菜。
 
「はい。鶴ちゃん、あなたもすばらしかったですよ。ありがとう。そして、華乃宮小町さんと観音寺暁子さん。おふたりがいてくださったから、この企画は成功したと思ってます。心から感謝すると同時に、これから先も是非、『しらこわ』にお力添えくださいネ。あと、ブレイク前のお笑い芸人のみなさんも、どうもありがとうございました。あなたたちの盛り上げは、『しらこわ』には必要不可欠です。来年もよろしく頼みますよっ!そしてそして、お越しいただいた推薦者3名のみなさん。本当にありがとうございました。ちょっと、せっかくなんで、最後にひとことずつ、戴きましょう。じゃあ、石坂さん!」
 
「どうもありがとうございました!」
 
「続いて、蜷川さん!」
「夢みたいでした。アッという間でした。楽しかったです。ありがとうございました」
 
「それではさいごに、世尾さん。私、思うんですけどね。世尾さんのコメントがかなり影響したんじゃないかと感じてるんですけどね・・・。えっ!?巻いてる?じゃ、世尾さん。さいごにひとことだけお願いします」
 
さて…。大盛り上がりのスタジオとは裏腹に、眞と美香の家がふたたびシーンと静まり返る。眞はこころの中で祈っていた。
 
「おふくろ、ここ、勝負だぞ。さっきウケたのを帳消しにしないでくれよっ」。
 
その想いは美香も同様だった。
 
「ここよ、ここっ! お母さん、ここで未来が決まるよっ!」
 
当の直子はといえば、ステージの主役の座を陣取りながら、全人生でいちばんの恍惚状態にあった。今や日々の生活の中でもっとも大切で大好きな『しらこわ』をナマで観ることができた上に出演まで叶い、憧れの百田寿郎に会えただけでなく、手も握ってもらえた。そして、直子が自信をもって推薦した勝田永太郎が「かかりた医賞」に輝いたのだ。こんな幸せな瞬間は二度とないだろうと思いながら、番組エンディングの熱狂の中心で、全身でよろこびを感じていた。その矢先の、あこがれのナマ百田からのフリだった。
 
そして、そんな直子が無意識に放った言葉は・・・。
 
「勝田先生にかかりた医。百田寿郎さん、また会いたい・・・」
 
1秒後。直子の言葉を待って多少の静寂が漂っていたスタジオ中に、再びの大歓声と大拍手。その渦中に、どこからともなく、「『かかりたいに、あいたい』やぁ~。ばあさん、タダ者ちゃうなぁ」という声が…。そして、大盛り上がりの中で、ディレクターらしき大声が。
 
「はい、ラスト30秒。3人、〆て~ッ!」
 
カメラが、中央ステージから一歩前へ出た百田・小町・暁子のスリーショット、や、なんと直子までが百田に手を引かれ四天王状態に映っているではないか!
 
喧噪の中で、百田が直子に耳打ちした。
 
「しらこわのキメポーズで終わるので、ご存知なら是非ご一緒に」
 
そして。
 
ラスト25秒~っ!
 
裏方が急きょ文字起こししたのだろうか。『今夜決定!2023かかりた医賞 井之頭全人医療クリニック 勝田永太郎博士』と映し出されたスクリーンをバックに、先鋒は華乃宮小町。「散る桜 残る桜も 散る桜」、次鋒に観音寺暁子。「時は今 生涯青春 人生薔薇色」
 
はい、15秒~ッ!
 
最後に百田寿郎。「一年間ご視聴ありがとうございました。さいごはみなさんご一緒に~っ。今夜も明日も来年もぉ~、ムゥイビエン!」
 
直子は3人につられるように、人差し指を差し出した左手を天に掲げ….…。 
なんと、直子を加えた4人がカメラに向かって……、バッキュ~ンッ!
 
ブレイク前のお笑い芸人たちのバッキュ~ンッ!に、一瞬カメラが切り替わると、鶴ちゃんが絶叫する。
 
「ありがとうございましたっ。かかりつけ医より、かかりた医~ッ!」
 
カメラが中央に戻ると、紅白歌合戦のエンディングさながらに、金銀の紙吹雪がバコッと放たれる中、やんややんやのお祭り騒ぎの中で番組が終了。YouTube画面が停止した。
 
 
 
画面が停止するや、志保と響介がボソッと言った。
 
「おばあちゃん、ヤバいかも。明日から人生変わるかもよ」
 
眞はなぜか誇らしい気分で、ニヤリとひとこと。
 
「あれがキミたちのおばあちゃんだ!」
 
美香の家では、寛貴と萌が目と口を大きく開いて母の手を取る。
 
「マジか~っ!おばあちゃん、スッゲェ~ッ!凄すぎるっしょ~っ!」
「ママも、なんていうか・・・言葉が出ない・・・」
 
 
スタジオでは慌ただしくセットが撤収される中、出演者同士が会釈と会話を交わしつつ、スタジオから退いていく。観覧席から直子のもとに駈け寄ってきた素子と美子が加わり三人娘が、談笑している百田・鶴田・小町・暁子の様子を窺っていた。素子と美子の手には、しっかりと色紙の山が。どう声をかけようか迷い困惑していた三人娘に声をかけたのは鶴田妃菜だった。
 
「あ~っ。みなさん、今日は本当にありがとうございました~っ」
 
同時に、百田らも三人娘に気づいて近づいてくるではないか!
 
「世尾さ~ん。世尾直子さん。今日の企画の最大の立役者はあなたかもしれませんよぉ」と、華乃宮小町がキリリとした涼しい瞳で直子を直撃。
 
不意を喰らった直子は目をパチクリさせながら、「そんな。小町先生。先生のおかげでかかりつけ医との向き合い方が変わりました。本当にありがとうございました」と返す。ソツのない応対である。
 
やや目を見開いた様子の小町の隣で、観音寺暁子が口をはさんだ。
 
「世尾さんのひとことで大勢は決していましたね。当意即妙な対応に、とても感動しました。世尾さん、サイコーでしたぁ。ありがとうございましたぁ~」
 
そして、百田寿郎が直子の前に立った。
 
ありがとうございました。世尾さんのおかげです。大成功でした。あっ、これ。サイン? しますよ、何枚でも。みんなもしてあげてよネ。あと、写真とかも言ってください。一緒に取りましょうよ、ネッ。
 
こんな具合で、三人娘は天にも昇るひと時を過ごしたのだった。三人娘にとって、筆舌には尽くしがたい贅沢なクリスマスイブ。百田・妃菜・華乃宮・観音寺に脇を囲まれてシャッターに収まった直子、喜寿のダイナマイト・イヴであった……。

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