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【医療マガジン】エピソード11 聖夜の奇蹟!かかりつけ医大賞(1/5)

直子のもとに、「かかりた医大賞」にエントリーした井之頭全人医療クリニックの勝田永太郎が、最終選考の10名に選抜されたという連絡が届いたのは、12月初めのことだった。

直子が77回目の誕生日を迎えた11月5日の朝に投函してから一ヵ月にもなろうとしていたので、これはダメだったかと落ち込んでいたが、あきらめかけていたところに、「かかりつけ医大賞」の運営事務局を名乗る女性から吉報を知らせる電話が鳴ったのだった。
 
事務局によれば、全国から200名ものエントリーがあったため、書類審査に予定以上の時間を要してしまったようだ。あわせて、10名の当該ドクターをエントリーした応募者には、『しらこわ』でナマ配信する「決定!2023究極のかかりつけ医大賞」の模様をスタジオ見学できること。さらに、放映前の準決勝で最終候補の3名に選出された場合は番組に出演できることが伝えられたのだった。
 
直子は喜びのあまり放心状態に陥り、その直後には、うれしさのあまり実感が湧かず、さらに翌日からは過度の脱力状態で寝込んでしまうというありさまだった。
 
素子と美子。それに眞と美香はもちろん、孫の志保・響介・寛貴・萌までもが、まさしく陣中見舞いに訪れた。そんなだった直子がようやく日常を取り戻したのは、師走も半ばになってからのことである。
 
直子がまずやったのが、『しらこわ』の過去動画の中から、医療をテーマにした回をすべて、改めてもう一度鑑賞、いや、復習することだった。丸5日をかけて全15本。順番のちがいこそあれ、それは、直子が『しらこわ』と、そして百田寿郎と運命の出会いを果たしてから今日までの軌跡をたどる時間であった。
 
この半年で、直子の生活は大きく変わった。それも、限りなくプラスの方向に、だ。コロナショック以降、部屋に閉じこもりがちだった直子だが、『しらこわ』ゆえに籠りの質が劇変した。胸がときめき、気持ちが若返り、元気になった。孫との接触頻度も高まり、娘と息子とのこころ距離も明らかに縮まった。

そして、地域の医者情報を積極的に収集することに楽しみを見出し、やがてそれは、「かかりつけ医大賞」という明確な目標ができたことでさらに加速した。今や直子は、毎日がウキウキワクワク状態で、完全に青春を取り戻したといっていい。そんな直子の姿が、子どもにも孫たちにも輝いて見えるのだった。
 
そんなことも手伝ってか、今年はクリスマスか大晦日かのいずれかで、みんなで一緒に過ごそうという話まで持ち上がった。結果的に、直子がクリスマスイブに『しらこわ』のスタジオに出向くことになったため、大晦日から元日にかけて、人生の節目節目で世尾家がよく利用する料亭で個室を借りて、家族パーティーを開くことになったのだった。
 
 
さて、直子のもとに吉報が届けられた日から半月ほど遡る・・・。
 
百田寿郎と鶴田妃菜、華乃宮小町と観音寺暁子は、それぞれチームを組んで、2週間をかけて、エントリーされた約200人のドクター(診療所)を半分ずつ受け持ち吟味することになった。ネット上の情報はしらみつぶしに当たり、著作や論文にも目を通し、過去のメディア掲載記事にも目を通した。
 
そして、両チーム10人ずつの候補を持ち寄って、4人それぞれが「これは!」と思えるドクター3名を選び、プレゼンテーションを行った。そのプレゼンを受けて各10点満点で採点し、合計得点が多い順に上位10名を決定。12月の声を聴くと同時に、当該10名の医者をエントリーしてくれた全国の『しらこわ』視聴者に、採択通知を発送したのだった。
 
この数週間で、百田と妃菜は一気に距離が縮まった。小町と暁子の場合はZOOMでの打合せが殆どだったのに対して、百田と妃菜は番組がある日以外も、絶えず一緒だった。なんせ同じオフィスなのだから。かなりハードな作業だったため当然のごとく残業になるし、飲食を共にする機会も一気に増えた。仕事の合間にはパーソナルな話もするし、ほぼ毎日一緒に帰路につくのも自然の成り行きだ。
 
将来女医になることを目指している百田の愛娘・蒼は、「かかりつけ医大賞」のことを知ってからは、たまにオフィスに顔を出すようになった。やはり、将来の進路に密接に関わるテーマなので関心が高かった。蒼が資料作りの手伝いの傍ら、妃菜と楽しげにおしゃべりしている光景を見守りながら、百田はいつのまにか、鶴田妃菜のことをひとりの女性として見ている自分に気づくのだった。

一方の小町と暁子は、さまざまな協働プランを出し合っていて、年明けからはひとつのユニットとして事業を立ち上げることが濃厚である。
 
それぞれがそれぞれに、新しい年に新しい希望や目標を掲げながら、年内最後の大仕事に向けて準備に抜かりなかった。(To be continued.)


【参考図書】

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