見出し画像

最強の精神的幸福 ~老いらくの恋~

今回は、精神的幸福の最後のお話です。私たちに生きがいや希望をもたらしてくれるもっとも大きな精神行為。ズバリ、色恋を取り上げます。
 
早速ですが、脳という臓器は、前頭葉から老化が始まると言われています。物忘れでは海馬が注目されますが、海馬よりも先に縮むのが前頭葉です。症状としては、とにかく意欲が落ちます。で、アタマもカラダも使わなくなって認知症が進んでいきます。だから、認知症になりたくなければ、前頭葉の老化抑制が不可欠です。
 
それでは、どうすれば前頭葉の老化を防ぐことができるかというと、これまたズバリ、ハラハラドキドキ・ワクワクウキウキの感情を掻き立てることです。となると、もっとも効果的なのがギャンブルとロマンスです。でも、ギャンブルの高揚感は一過性のものですし、確実におカネをロスしますからおすすめはできません。
 
ということで、おすすめはズバリ、老いらくの恋をすることです。年齢を重ねることで生殖機能はなくなりますが、一方で、男女とも性欲はなくならないことがわかっています。これ、高齢になればなるほど好都合です。避妊しなくても、妊娠のリスクがありませんからね(失礼!)。ありのままの自分で、思う存分に励むことができますからね。ただ、まぁここでお伝えしたいのは、恋愛による身体的幸福の話ではありません。精神的幸福です。
 
ひとたび恋愛に触れると、誰しも詩人になるものです。想いを寄せる人のたったひとつの眼差し、たったひとつの言葉、たったひとつの微笑によって瞬時に勇気づけられる世界。そこに意中の人がいるだけで、それ以外の景色などまったく眼中に入らなくなってしまう世界。この絶対的な拠り所が精神的幸福の源泉です。忌まわしくて穢らわしい人間界において、唯一無二の汚れなき神聖な世界。それが純真無垢な人間性に宿る恋愛の世界に他なりません。
 
アダムとイヴ、イザナキとイザナミから始まって、万葉の時代から今日に至るまで、人間がもっとも心ときめく精神活動がオンナとオトコの恋愛です。異論をはさむ余地はありません。この世には、オンナとオトコしかいないのです。男は女によって生かされて、女は男によって生かされるのです。女を女らしくできないような男は男じゃありません。男を男らしくできないような女は女じゃありません。恋愛をしてこその人生です。
 
ならばもう一度、認知症にならないためにも、恋愛してみてはどうでしょうか?「自分はもう、そんな歳じゃないよ」なぁ~んて、言ってる場合じゃありません。肝心なのは、実際の年齢ではなく精神年齢です。美しき若葉の頃に立ち戻って、私たち人間にだけ与えられた崇高で荘厳なる恋愛の世界で、今一度、炎の薔薇を咲かせてみようじゃありませんか。現代人の多くがもっとも怖れている認知症を回避するためにも。
 
恋愛をすれば、確実に感情のテンションが保たれ、成長ホルモンがギンギンに分泌され、免疫力が高まります。ボケてる暇なんかありません。本当はシニア向けのキャバクラやホストクラブがあったっていいくらいです。残念ながら、現在のところ、そういうお店は見当たりませんから、まずは自分で何とかするしかありません。
 
天に星、地に花、人に愛……です。認知症という呪縛から逃れて、精神的幸福を極めるためにも、老いらくの恋の世界を風のように颯爽と駆け抜けましょう。
 
 
ここからは、勇気づけられる「老いらくの恋」のお手本を3つ、ご紹介していきましょう。

まずは、『若きウェルテルの悩み』で有名な、偉大なる文豪ゲーテ。私も彼の大ファンです。恋多き彼の最後の恋愛は74歳の時。19歳のウルリーケ嬢にひとめぼれして求婚したのは有名な話です。自分よりもはるか年下の女性の両親に結婚承諾を頼みますが、当然のごとく断られます。

その絶望の中で、ゲーテは、ドイツ最大の恋愛抒情詩と称される『マリーエンバートの悲歌』を生んだのでした。大失恋の痛手のなかにも、生きる意味を見出すゲーテなのです。それにしても!年齢差55歳ですよ。これはもうリスペクトものです!なお、この大悲恋のお相手であったウルリーケは、一生結婚しなかった…。この話は、もはやミステリーかもしれませんね。
 
つぎは、江戸時代の禅僧・良寛さん。彼が70歳の時に、突然のロマンスが訪れます。お相手は、良寛の人柄を慕って弟子入りを申し込んできた美しき尼僧、貞心です。歳の差は、なんと40歳です!

最晩年の良寛を支えた献身の尼僧、貞心尼との晩年の出会いは良寛の心を潤し、「彼女に会いたい」・「彼女が愛しい」という素直な気持ちを歌に詠むようになります。70歳をこえ、貞心と会える時間が残り少ないという予感もあったのでしょう。老いゆく良寛の切実な思いがひしひしと伝わってきます。
 
良寛は74歳で亡くなりますが、残された貞心は良寛の墓を建て、ふたりの思い出を『はちすの露』にまとめました。5年の歳月に交わした恋と愛の歌の数々が収められています。良寛と貞心。師弟のようでもあり、親子のようでもあり、恋人のようでもある二人の不思議な関係。それぞれの想いを素直に伝えられたのは、和歌というコミュニケーション手段があったからこそかもしれません。いゃあ、感動ものです!
 
さいごは、「老いらくの恋」という言葉を世に出した東大出のエリート商社マンで歌人の川田順です。彼は、60代半ばでふた回り以上も年下の人妻と恋に落ちます。しかも、友人の妻です!きっかけは、歌の弟子として指導したことでした。その10年ほど前に妻を亡くして孤独な日々を送っていた川田順の心に、いつか彼女の影が深くしのび入った…。そんな感じだと思います。彼女のほうもまた、夫との関係は冷えきっていました。
 
墓場に近き老いらくの 恋は怖るる何ものもなし
 
川田が彼女におくった恋歌『恋の重荷』の序章の一節です。彼女には3人の子どもがいました。事が表沙汰になるや、世間はこれを「老いらくの恋」と呼んで非難します。川田は苦悩し、亡妻の墓に頭を打ちつけて自殺を図るという事件まで引き起こしました。やがて、彼女は夫と協議離婚。川田と彼女は住みなれた京都を離れ、湘南の辻堂で新しい暮らしをはじめます。ほどなく子どもも引き取り、彼らは静かな余生を過ごしました。
 

どうでしょう。三者三様。本気で恋して、愛して、生きたんだなぁと感銘を受けます。恋愛というのは、あまりに純粋で、つらくて、切なくて、美しいものですよね。私たちにとってもっとも尊い精神活動だと思います。
 

本書を読んでくれたみなさんが、いま一度、恋愛というものに向き合ってみようと思ってくれたとしたら、とてもうれしく思います。ハラハラドキドキとワクワクウキウキに胸ときめかせながら、認知症と関わることなく、100歳くらいまで生涯青春を全うしてほしいと願っています。恋して、愛して、生きてください!

精神的幸福をひと言でまとめるとこうなります……。

恋すりゃボケてる暇はないっ!

「Yes愛am ~老いらくの恋のすすめ~」の紹介 - YouTube

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?