見出し画像

巣ごもりで国産CDNのJストリームが業績拡大。NTTとKDDIの共同出資で誕生した歴史ある企業

国内企業の決算をチェックしていたところ、Jストリームという企業の業績が拡大していました。

Jストリームの20203月期は売上+24.5%増と業績予想を上振れ

2020年3月期_決算短信〔日本基準〕(連結)

Jストリーム 2020年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

2020年3月期の売上高は84.42億円と、前年比+24.5%の増収に。営業利益は5.47億円で+74.7%と大幅な増益です。

2020年3月期_連結業績予想と実績値との差異及び個別業績と前期実績値との差異、_特別損失の計上、並びに配当予想の修正に関するお知らせ

2020 年3月期 連結業績予想と実績値との差異及び個別業績と前期実績値との差異、特別損失の計上、並びに配当予想の修正に関するお知らせ

期首予想に対しては、売上が+3.5%、営業利益は+30.3%も上振れています。

2020年3月期_本決算説明会資料

Jストリーム 第23期本決算説明会資料

四半期業績を見ると、2Q以降に売上、利益とも成長が加速しています。

NTTとKDDIの共同出資で始まったJストリーム

どのような会社なのか存じ上げておらず少し調べてみたら、日本のIT産業黎明期に設立された歴史ある企業でした。

最先端の動画ソリューションをあらゆる企業に___Jストリーム

会社HP

Jストリームは1997年、国際電信電話(KDD)、NTT・PCコミュニケーションズ、トランス・コスモス、米国のProgressive Networksという4社の共同出資によって「リアル・ストリーム」という社名で設立されました。

NTTとKDDIが珍しく手を組んで投資したのは「CDN(コンテンツデリバリネットワーク)」です。JストリームはWebページや動画といったインターネット・コンテンツを配信するための通信インフラを提供しています。

CDNといえばAkamaiが世界的に有名ですが、国産CDNがあったとは知りませんでした。。Jストリームは日本国内に特化したRegional CDNとなっており、ITバブル期でトラフィックが急増してきた日本のネット業界を支えるために設立されたと思われます。

会社沿革___企業情報___Jストリーム

2001年に東証マザーズへ上場し、携帯電話が普及してきた2005年にはドコモ「iチャンネル」対応サービスを開始。その後、インターネット業界の発展とともに、オンライン動画関連技術の研究開発やサービス提供を続けてきました。

主要取引先___導入事例___Jストリーム

Jストリーム 主要取引先

主要取引先には大手放送事業者がズラッと並んでいます。年間1,000社以上と取引があるとのこと。

ITバブル崩壊後に低迷していた株価は、ここ半年で3倍に


jストリーム_株価_-_Google_検索-2

長期の株価推移を見ると、ソフトバンクグループやヤフー等と似たような感じで、ITバブル期が弾けた後は低調な推移となっていました。

しかし、2019年後半から半年で株価は3倍近く上昇しています。

jストリーム_株価_-_Google_検索

昨今の情勢もあり、オンライン動画は数少ない成長市場。時流に乗ってJストリームの業績も拡大したと想定されます。時価総額は241.4億円ほど。

実は医薬・医療業界向け売上が35%を占める

売上の内訳をもう少し詳しく見てみると、業種別の構成が思ったよりも興味深かったです。

2020年3月期_本決算説明会資料-2

中核を担っていると思われた「放送」関連の売上比率は23.0%程度。構成比が最も大きいのは「医薬医療製造・卸」で35.0%を占めています。

2020年3月期_本決算説明会資料-3

Jストリームは医薬業界の非効率な情報収集方法に注目しており、価格競争の激化に対する営業コスト改善を支援しています。

2020年3月期_本決算説明会資料-4

環境変化に伴い、医薬品業界はデジタルマーケティングへシフト。動画コンテンツの重要性が高まる中、Jストリームは動画配信だけでなく、集客からデジタル運用、次施策提案まで一連のプロセスを支援しているそうです。

画像11

エムスリー 2020年3月期 第3四半期決算発表資料

医薬・医療×インターネットという領域が成長市場であることは間違いありません。医療従事者専用向け情報サービス「エムスリー」は現在、登録医師数で世界全体の半数をカバー。主要取引先にエムスリーは挙がっていませんでしたが、医薬・医療関連の動画市場が拡大している中でJストリームも成長を遂げていることが伺えます。

動画コンテンツはメディアだけでなくエンタープライズ全般が活用する時代に

もはや動画コンテンツは通信・放送事業者だけが取り扱うものではなく、全産業で活用が急速に進んでいます。

2020年3月期_本決算説明会資料-5

Jストリームはメディアだけでなく、エンタープライズ領域を強化することでさらなる成長を目指しています。

続いて、リモートワーク推進に合わせた最近の取り組みについても。

2020年3月期_本決算説明会資料-6

2020年3月期_本決算説明会資料-7

セミナーやイベントのバーチャル化、グリーのバーチャル株主総会を運営したそう。

2020年3月期_本決算説明会資料-8

メディア向けにはリアルタイム動画編集サービス「Grabyo」を販売開始。リモート環境での共同作業が効率化されるうえ、クリッピング映像のSNS投稿機能とかはかなり便利そうです。

TikTokの流行などを見ても、動画ノウハウは一般消費者も含めてすべての人にとって不可欠となっているでしょうし、今後もJストリームのような企業の重要性は増していくように思いました。

おまけ〜日本のCDN市場シェア〜

最後に、Jストリームが発表している日本のCDN市場シェアを確認してみます。

4月30日に最新版が出ていました。

日本語サイトのCDNシェア

画像17

JPドメインのCDNシェア

画像18

日本のCDNシェアについて調査結果@2020年4月

首位はAmazon Web Servicesが提供する「Cloudfront」で、4割近いシェア。Akamai、Cloudflareを合わせて9割近くを支配しています。

やはりAWS強し…という印象。

画像19

過去4.5年のJPドメインサイトのCDNユーザー数推移を見ると、CloudflareがAkamaiを抜いて2位に躍り出ています。CloudflareはGoogleやMicrosoftも出資していた企業で、昨年にニューヨーク証券取引所に上場しました。

画像20

Cloudflare Q4 2019 Investor Presentation

ここ3年間のCAGRは50%、顧客総数は260万社を超えており、大口顧客は550社に到達しました。ゴリゴリに伸びています。

画像21

200都市に拠点があり、インターネット人口の99%をカバー。

最近ではAlibaba CloudJD.comとの提携を発表するなど、日本だけでなく中国・アジア圏での事業を拡大しているようです。

競合のFasltyについても、国内事業者であるIDCF社のCDNが自社CDNからFastly社に移行しており勢力を拡大中。CDN市場はAkamai1強からAWSがシェアを奪った後、次なるフェーズに入ってきてるようです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?