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電気的地球科学への招待ー番外編②空はなぜ青いか?

良く晴れた日、空を見上げると澄み切った青い空が見えます。青い空はあまりに日常的で、なぜ青いのかと疑問を抱く人は少ないかもしれません。有史以来、人間は青い空を見続けてきましたが、なぜ空が青いかに科学が答えを出したのは19世紀後半のことでした。イギリスのレイリー卿は光の回折、反射を研究する中から、波長より小さな粒子が短い波長をよく散乱させるレイリー散乱を発見しました。このことから、大気の上層では短い波長の光がよく散乱されることで空は青く見えると説明されたのです。21世紀になった現在でもほとんどの人は、この説明に満足しています。しかし、レイリー散乱では青よりも波長の短い紫が見えるはずですが、そうなっていません。空の青にはまだ未知の現象があるのです。

散乱なら空はまだらではないか?

夕方になって、太陽が傾いてくる時間に東の空を見るとまだ空は青く見えます。だんだん日が沈むにつれ、空が暗くなっていきますが、空は日没まで同じ青を保ちます。散乱なら太陽との角度によって散乱の度合いが違ってくるはずですが、ほとんど変わらないのが空の青の特徴です。
国際宇宙ステーションから地球を見ると大気上層が青く光っているのが見えます。

紫、藍色といった青より短い波長の光はありません。このことからもレイリー散乱ではないことが明らかです。また、もしレイリー散乱が起きているとしたら、地表近くでも散乱は起きるので、空だけでなく私たちの周囲はぼんやりと青く見えるでしょう。
空の青がレイリー散乱であるという説は完全に破綻しています。
しかしながら、太陽光が大気で散乱しないというわけではありません。遠くの山を見ると白くかすんで見えます。海の沖合を見ると空の青が白っぽく見えます。これは空気中のチリやほこりのため、可視光全域で散乱が起きているためです。粒子の大きなチリによって起きる散乱をミー散乱と言います。

空の青さはオゾン層の高さ

空の青く光る部分を日没から暗くなるまでの時間差を利用して計算すると、おおむね高度30kmより上であることがわかります。これはISSからの画像を見ても同じです。高度30km付近はオゾン層で100kmくらいまで酸素、窒素が電離した電離層が続きます。隕石が光り出す高度は約100kmより下からですが、この高さから電離した気体分子が増えてきます。ここでは何が起きているかと言えば、紫外線の吸収が起きています。

大気中では水蒸気による吸収が大きいが、紫外線領域ではオゾン層の吸収が顕著

宇宙での太陽光スペクトルと地上でのスペクトルを比較すると波長全域で大気による吸収があることがわかります。このうち可視光から赤外領域にかけての吸収の多くは水蒸気によるものです。紫外線はオゾンによる吸収が多いとされています。
ここで、太陽光の吸収について1968年の論文から一部を紹介します。

電離層圏における原子分子過程 高柳和夫(東京大学宇宙航空研究所報告1968.1)

要約すると、大気上層では酸素原子による紫外線の吸収があるが、そのエネルギーがどこに行っているのかわからない。励起エネルギーとして光に変換されている可能性を指摘しているのです。
酸素、窒素は励起されるとちょうど青の領域の光を放射します。

酸素、窒素などを充填したスペクトル管の発光

窒素は少し紫がかった青、酸素は水色に近い青です。先にあげた論文では酸素の励起発光について触れていましたが、オゾン層とはいえ、窒素のほうが多くあります。窒素が多く励起発光しているとなると空の青はもう少し紫っぽいはずです。

窒素の励起発光がずれる

ここで少し励起発光のメカニズムについて考えてみます。

https://www.mces.titech.ac.jp/authors/hosono/facilities/PL.html  より

原子の周囲にある軌道電子が紫外線などにより、エネルギーを受け取り励起されると、その軌道の外側に移動します。励起状態になった電子は、光を放射して元の軌道に戻ります。このとき、原子の周囲にある電子軌道での電子が持つエネルギーの差ー原子核からの距離が放射される光の波長を決定します。励起発光のスペクトルが鋭い棒のような分布を持つ輝線と言われる所以です。

ところで、以前の記事では原子核に入射するニュートリノによるガンマ線の定在波が軌道電子を維持していると書きました。

陽子振動が軌道電子の半径を決定しているのです。ところがニュートリノ密度は衛星軌道と地上とではかなり違います。宇宙線による空気シャワーは高度20km以下で顕著に増加します。つまり空の青が発生している30kmより上では、宇宙線による空気シャワーがありません。当然、ニュートリノも太陽ニュートリノ、銀河ニュートリノしかないので、全体としてニュートリノ密度が低いわけです。ニュートリノ密度が低いということは原子核から放射されるガンマ線の頻度も低下するので、軌道の間が狭くなっていることが予想されます。

たとえば、人工衛星に原子時計を乗せると相対性理論の時間の遅れのため、原子時計の遅れが生じると言われています。原子時計ではルビジウムなどの原子にマイクロ波を照射して、吸収されるマイクロ波の周波数を時間の基準にしています。ニュートリノ減少で陽子振動の頻度が減るとルビジウムの電子軌道が狭くなり、吸収されるマイクロ波のエネルギー、周波数が低いほうにずれます。それで時間が遅れるように見えるわけです。衛星軌道上で原子時計が遅れるのは、相対性理論のせいではないのです。

つまり、本来地上では紫がかった励起発光をする窒素原子は、ニュートリノの減少により波長の長いほうへ励起発光がずれて青く光っている、ということなのです。酸素原子についても同じことが起こっていて、窒素原子の青と混ざって、空の青を作り出しているわけです。有害な紫外線を無害な青に変換するシステムが地球にはあったのです。

地上から見ると背後には宇宙の黒があって、オゾン層付近で窒素原子、酸素原子が青く光っており、その手前ではミー散乱により空気の濃い層が白っぽくなっている。この3つの組み合わせが空の青を作っているという仕組みです。

オゾンホールが広がっている南極では空の青さがちがう(2015年ごろ)

夕日が赤いのは電離層が光るから

空の青に比べると夕日の赤は単純です。一般には夕日が赤いのは、太陽が傾くと太陽光が大気中を通ってくる距離が増えるため、波長の短い部分が減衰して、波長の長い赤が強調されるからだと説明されます。これでは、毎日必ず夕日は赤くなるはずですが、赤くない夕日もよくあります。この説明も間違っています。

じつは地球の周囲には3つか4つの電離層があります。電離層には太陽光、太陽風により電離した気体原子が存在します。この酸素原子などが太陽風の影響で発光することがあるのです。

とくに一番外側のF層は厚さが600km以上あります。F層が発光すると赤くなります。F層の発光は弱く、日中は空の青のほうがはるかに強いため、赤が見えることはありません。しかし、夜間に赤く発光したとき、背後に月があると月が赤く見えます。夜間赤く発光することを夜光と呼びます。

電離層は太陽の影響で発光することがある

夕方、太陽が傾いて、F層の中を長い距離通り抜けてくるようになります。このとき、F層が赤く発光すると赤いセロハンを通したように太陽光が赤くなるわけです。夕日には非常にまれに緑色に見えるグリーフラッシュという現象があります。

電離層が緑色に光るグリーンフラッシュ

グリーフラッシュは、電離層が緑色に光ったときに偶然見える現象です。

いかがでしたでしょう?空が青い理由はかなり複雑なメカニズムが働いていることがわかりました。単純に見える現象が実は複雑な仕組みを持つことは、地球上の重力でも見られることでした。科学は自然現象を単純な要素に還元する還元主義であると言われていますが、単純化が本当のメカニズムを隠してしまうこともあるのです。

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