山の本棚・加藤泰三
『霧の山稜』(復刻版)
加藤泰三 二見書房 昭和46年3月
古い漢字や旧仮名づかいがなければ、この本が戦前に書かれていたことを忘れてしまいそうになります。知っている山や山道具があまり変わらぬ形で描かれていて、文章に暗いところがありません。
本書には『「霧の山稜」の復刊に際して』という二つ折りの紙が挟んであって、実姉の天童雅枝さんが復刊の経緯を書いています。また、加藤氏の略歴が載っていて、美校出身で旧制中学の教師をしていたことなどがわかります。
引越しなどで箱やカバーも無くして、ずいぶん経ってから神保町の悠久堂書店で新しいものを買いなおしました。最初に購入したのは昭和53年再版で、後で購入したのは昭和46年(復刻版の)初版でした。補充シートが付いていて、店のおばさんが抜いていましたが、まだ補充できたのでしょうか?
『山より帰る』
加藤泰三 加藤泰三遺作刊行会 平成7年
こ の本は『霧の山稜』に収録されなかった作品と、それ以降の作品が収められた遺稿集のようです。装丁やフォントは『霧の山稜』と同じ作りになっています。本書の題名は「山より帰る 絵と随筆」と題したの表紙の下絵からとっています。
本書には、昭和17年の「手紙」までが収められていて、この文の最後にある「すっかり日にやけた。かへったら招集令状が来てゐた。いい兵士になるぞ。」という言葉が印象的です。突然現実に戻され、ポッカリ胸に穴が空いたような悲しさを感じます。
『詩集 仄かなるもの』
加藤泰三 加藤泰三遺作刊行会 昭和61年11月15日
1998/8月に平凡社ライブラリーから文庫版の『霧の山稜』がでて、その大谷一良氏の解説によれば、加藤泰三遺作刊行会から『詩集 仄かなるもの』(昭和61年11月)が出版されたことを知りました。その後、ヤフオクでたまたま見て入手しました。
原稿用紙に書いたものを綴じたのが原本ですが、この本の背景にも原稿用紙の枠線が薄く印刷されて、オリジナル原稿の雰囲気を出しています。
まえがきには昭和8年3月27日の日付があります。『姉に』と献辞があり、山と直接関係のない私的な手紙や随想が入っています。一般に向けに書かれたものではないかもしれません。
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