見出し画像

【SDGs映画紹介】少年兵が生まれる構造を知れる『ビースト・オブ・ノー・ネーション』

「10年後の未来をつくるノート」編集部が、さまざまな視点からおうち時間をSDGsに触れる時間にするためのアイデアをご提案をしていく「おうちでSDGs」。今回は、少年兵やテロリストが生まれる背景を知ることができる映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』をご紹介します。

推薦者は、10年後の未来をつくるトークでお話いただいた、映像クリエイターでWORLD FESTIVAL Inc.の近藤さん。エンターテイメントの専門家目線でSDGsを身近に感じられる映画をご紹介いただきます。

ビースト・オブ・ノー・ネーション
2015年製作/136分/アメリカ
原題:Beasts of No Nation
監督
キャリー・ジョージ・フクナガ
製作
エイミー・カウフマン、キャリー・ジョージ・フクナガ。ダニエラ・タップリン・ランドバーグ、リバ・マーカー、ダニエル・クラウン、イドリス・エルバ
製作総指揮
ジェフ・スコール、ジョナサン・キング テッド・サランドス、ポーリン・フィッシャー

西アフリカのとある国で内戦が勃発。家族を引き裂かれた少年は、武装集団に入ることを強要され、少年兵へと変貌していくのだった。

構造を知るから納得して行動できる

この映画は、西アフリカを舞台に、内戦によって家族を引き裂かれた少年が、次第に少年兵へと変貌していく過程を描いたドラマです。内戦が起きる中、平穏に暮らしていた少年の村に反乱軍を打破する政府軍がやってきたことから、少年の運命は翻弄され始めます。強制的に武装集団の一味に加えられた少年が、少年兵、テロリストとして戦いに巻き込まれていく様子が、すごくリアルに描かれています。

特に冒頭のシーンで、幸せだった家族を突然奪われてしまう。その残酷さと悲しみは個人的に「本当にこういうことがあるんだな、、」と驚きと胸が締め付けられるような思いで印象に残っています。この映画はドキュメンタリーではありませんが、活字やニュースの情報ではわからないような臨場感ある現状を覗き見ることができます。

また、本当は少年兵として生きることを望んでいない中、その想いとは裏腹に強制的にその手を血で染めていき、抜けられない沼にはまっていく様子がとてもリアルです。

日本で暮らしているとあまり身近でない「少年兵」・「テロリスト」というものがどういう構造で生まれるのか、その裏側を知ることができる映画です。また、その背景にある、子どもの教育、貧困、紛争、経済格差など、様々な社会問題への想像力が掻き立てられます。

問題の裏側、どうしてその問題が起きているかを知ることは、社会問題と関わる上で重要なことです。背景まで理解していれば、自分のアクションがどういう影響があるかを想像できるので、納得感を持って関われますし、違うアクションの選択肢を考えることもできます。

一人の子どもの変化を描くことで、その問題の背景を理解しやすい映画です。Netflixが初めて製作したオリジナル映画で、全米劇場公開と同時にNetflixでも配信されたことでも話題になりました。

言葉としては聞いたことがある「少年兵」・「テロリスト」というものが、なぜ生まれるのか。本当は必ずしも全員が元々悪い人たちではなく、背景にある社会情勢による影響などによって1人の人生が変わってしまうこと、本人は全く望んでいないその状況に結果的に追いやられてしまったことなど、私たちの身近なところからは中々想像ができない状況を映画は伝えてくれます。

背景を知ることで、想像できる世界は変わります。それは、紛争や貧困といった問題だけでなく、すべての社会問題に言えることです。SDGs達成のために「問題」と言われていることの裏側を想像したり、調べたりすることもSDGsアクションの一歩です。そんな一歩一歩の行動が積み重なることが、多くの社会課題を解決する上でもっとも重要なことだと思います。