【SDGs映画紹介】スラムの少年の半生を描く『スラムドッグ$ミリオネア』
「10年後の未来をつくるノート」編集部が、さまざまな視点からおうち時間をSDGsに触れる時間にするためのアイデアをご提案をしていく「おうちでSDGs」。今回は、日常の景色の中で様々な問題と触れられる『スラムドッグ$ミリオネア』をご紹介します。
推薦者は、10年後の未来をつくるトークでお話いただいた、映像クリエイターでWORLD FESTIVAL Inc.の近藤さん。エンターテイメントの専門家目線でSDGsを身近に感じられる映画をご紹介いただきます。
スラムドッグ$ミリオネア
2008年製作/120分/イギリス
原題:Slumdog Millionaire
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
監督 ダニー・ボイル
製作 クリスチャン・コルソン
原作 ビカス・スワラップ
脚本 サイモン・ビューフォイ
撮影 アンソニー・ドッド・マントル
美術 マーク・ディグビー
音楽 A・R・ラフマーン
編集 クリス・ディケンズ
世界最大のクイズショーで、残り一問まで辿り着いたスラムの少年。間違えれば、一文無し。正解すれば、番組史上最高額の賞金を手に入れる。〈スラムの負け犬:スラムドッグ〉が全てを賭けて出した、人生の“ファイナル・アンサー”は―?
楽しく見ながら社会問題に気づける
クイズショーに出場した、スラム出身の少年の半生をスピード感を持って描いていく本作。疾走感があり、とても見やすい映画です。社会問題をテーマに扱った映画ではありませんが、一人の人生を振り返りながら見ていくことで、インドにある様々な社会問題を知ることができます。
この映画は私が大学生の頃に、なんとなく面白そうだなと観て、そこで初めて貧困問題の実態やこんなことが実際に起こっているのか、、と発見と共にショックを受けました。映画自体はとても面白い感動作ですが、終わった後にインドの貧困や児童労働、誘拐などについて自ら調べ出し、インドのみならず世界でこういうことはまだ現実にあるということを初めて知りました。それが今の自分の仕事にも繋がっています。自分にとってとても大切なきっかけを与えてくれた作品だと思っています。
なので、私も初めて見たときは社会問題を知りたくて見たわけではありません。また、詳細な背景の説明があるわけでもありません。しかし、物語の中では、貧困、子供の教育格差、人身売買、児童労働、経済格差、偏見・差別、など、人と社会にまつわる様々な問題を目にします。一人の人生を振り返りながら、結果的に社会を知ることができます。日常の光景として映し出されてくるので、気負わずに観られますし、社会にある知らない世界の魅力と共に、その背景にある課題や実情に興味を持つきっかけになりやすいのではと思います。
インドのスラムから強くたくましく生きていく子どもたち。その生きる力や魅力、可能性を感じることができ、「スラムドッグ(スラムの負け犬)」と世間からバカにされてきた主人公が、ミリオネア・ヒーローとして扱われていく様も痛快です。
社会問題は複雑で入り組んでいるもので、どれか一つを切り出すことは意外と難しいものです。一人の少年の成長過程の中で、日常の光景として様々な、その背景にある社会問題に触れられるこの映画は、ただのエンターテイメント作品ではなく、知らない世界やその奥底にある社会の姿に対する学びや気づき、発見などのきっかけを与えてくれる素晴らしい作品だと思います。ぜひご覧ください。