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『ローズマリーの赤ちゃん』とベトナム戦争

 『ローズマリーの赤ちゃん(Rosemary's Baby)』はロマン・ポランスキーが脚本も担って監督し、1968年に公開され、主演のミア・ファローのキャラも手伝って大ヒットし、尚且つ映画批評家からも高評価を得たホラー映画である。因みに小説家のアイラ・レヴィン(Ira Levin)の原作は前年の1967年に上梓されている。
 今回改めて観てみたのであるが、この作品のバックグラウンドを勘案するならば当時のアメリカのベトナム戦争の「泥沼」の中から帰還してきた兵士たちが被った枯れ葉剤による被害と、子供を産まなければならない新婚女性が受ける周囲のプレッシャーによるストレスで、奇形児が生まれ、儀式で慰められるという「暗喩」に一致し、当時のアメリカ人にとってはただのホラー映画ではなかったのではないかと思うのであるが、そのような視点で本作が議論されている様子がないのが不思議である。