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三ツ沢公園再整備計画

保土ヶ谷区、西区と隣接するところに三ツ沢公園(神奈川区)があります。
この章は『三ツ沢公園再整備計画』というタイトルですが、「ニッパツ三ツ沢球技場」が話の中心になります。

三ツ沢公園マップ

余談ですが「ニッパツ」というのは横浜市にあるバネメーカー、日本発条株式会社のことです。同社は三ツ沢公園球技場のネーミングライツを2008年から契約され、『ニッパツ』『ニッパツ三ツ沢』などと横浜市民やサッカーファンに親しまれています。

名称:三ツ沢公園球技場(ニッパツ三ツ沢球技場)
▶︎メインスタンド
 1964年竣工、築58年
 収容人数:5,580人

▶︎バック・サイドスタンド
 1992年竣工、築30年
 収容人数:9,874人

2022年6月、三ツ沢公園内に『新たなスタジアムを新設する方向性』が示された。

横浜・三ツ沢公園に新球技場 既存は残し全体を再整備 
 横浜市は1日、三ツ沢公園(同市神奈川区)に新たな球技場を整備する方針を明らかにした。老朽化やJリーグのスタジアム基準を満たしていないことを背景に、2年前から再整備に向けた検討を実施しており、市会常任委員会で検討状況を報告した。

 市によると、同球技場は建設から58年が経過し、老朽化が進んでいる。六つのプロチームが利用し、年間を通して利用が飽和状態にあるほか、屋根がないためJリーグの現在のスタジアム基準を満たさないという課題もあった。
神奈川新聞 | 2022年6月1日

再整備計画とは?

三ツ沢公園再整備計画の市民意見募集のリーフレットより

「再整備計画」という名ですが『オレンジ色で塗られた辺りに新しいサッカースタジアムをつくろっかなぁ』というのがプロジェクトの本題です。 

情報公開請求で入手された、市と設計事務所との議事録を読むと2021年度は、現存のニッパツ三ツ沢球技場を改修または改築の案で打ち合わせが重ねられていました。

しかし2022年、山中竹春市長の就任直後、現存の球技場は残し、新しくサッカー専用スタジアムを建設する方針に切り替わっていきました。

私は球技場の改修または改築には賛成ですが、現在、横浜市がすすめようとしている「もう1つサッカー新スタジアムを三ツ沢公園につくる再整備計画」には強く反対します。

まずは横浜市の主張をご紹介します。

【横浜市の主張の整理】
現存のニッパツ三ツ沢球技場の現状&なぜ新スタジアム建設をしたいのか

市の主張①【老朽化とJリーグ基準を満たしていない】
観客席に屋根が無いなど、Jリーグのスタジアム基準を満たしていない状況にある。築58年と老朽化が進み、バリアフリー化も不十分であることに加え、現行の法令に適合させながら既存のメインスタンドに屋根をかけることは、構造や施工の効率性の観点から困難と判断。

市の主張②【日照が減る】
球技場全体を建て替える場合、Jリーグのスタジアム基準に基づき全ての観客席への屋根かけが必要となるが、(屋根が無い現状と比較すると)日照時間が減るので、その分、球技場の稼働日を大幅に制限して芝生を休ませる必要があるから現在の位置で球技場を再整備しない。

市の主張③【使用状況が過密】
現在の球技場は市民や6つのスポーツチームに利用され、 国内でも突出した使用状況にあるため、新たな利用ニーズにも十分な対応ができていない。

【私の考え】

1)老朽化について
2)Jリーグのスタジアム基準について
3)日照の問題
4)2万人規模のスタジアムでは中途半端

1)老朽化について

ニッパツ三ツ沢球技場メインスタンドは建設されてから58年経過しており既存不適格建築物※になっているため「屋根の増設」が難しく、改修または改築の必要性を私も認識しています。

※既存不適格建築物…建築時点の法令では合法だったものの、その後に法令などの改正があり、現時点で適用される法令においては不適格な部分が生じた建築物のこと

前述のとおりメインスタンドは築58年が経っていますが、サイド・バックスタンドは築30年ですので、あと20年は運用できます。メインスタンドの改修改築こそ経済的にも環境的にも最もサステナブルな選択だと思います。

2)Jリーグのスタジアム基準について
Jリーグはサッカー文化普及のためにスタジアム基準というものを定めています。

現在、Jリーグはスタジアムに観客席の3分の1以上または観客席すべてを覆う屋根を備えることと定めています。
では、その基準を守れなかった場合の制裁内容は?

なんと制裁内容はこれだけなのです。

・対象スタジアム名公表
・屋根のカバー率不足への改善策もしくは構想の提出

前述のとおりJリーグのスタジアム基準は行政との交渉の材料であり、サッカークラブを戒める役割でないことがわかります。

3)日照の問題、屋根設置問題
山中竹春市長が就任する前はメインスタンド席の改修改築がメインで検討されていました。横浜市は現存の改修改築をせず、新しいスタジアムを検討する理由のひとつに屋根をつけることで芝への日照が減ることを懸念しています。
しかし私はこの問題は克服できる課題だと思っています。
高さの都合メインスタンド席に屋根がつけられないのであれば、バックスタンドやサイドスタンドを改修改築するときに設置したっていいんです。

Jリーグの場合、夏の暑い時期は夜に試合が開催されます。野球もサッカーも屋外スポーツです。確かに屋根はあったほうが快適になりますが、なくてもサッカーファン、サポーターは楽しまれます。この屋根の設置のために三ツ沢公園にもうひとつのサッカースタジアムを作ってあげるほどの財政的余裕は今の横浜市にはありません。

2021年度 梓設計との議事録より
2021年度 梓設計との議事録より

4)2万人規模のスタジアムは中途半端
新スタジアム構想の図面を建築家の大学教授に見ていただいたところ2万人程度と判明しました。この規模ですと横浜F・マリノスには小さ過ぎ、横浜FCには大き過ぎる中途半端なハコモノになる恐れがあります。横浜FCの平均動員数は7,000人強です。もしマリノスのためにスタジアムをつくるの規模3万人以上収容のスタジアムが必要のはずです。
2022年10月現在、いまだに横浜市はスタジアムの人数を明確に想定していません。
仮にもし3万人以上を収容できるスタジアムをつくる構想だとしたら、近隣の住民にもスタジアムに足を運ぶサッカーファンにとっても、なおさら三ツ沢公園ではない別の場所に構想するべきと私は考えます。

2022年度 国設計との議事録より

関係者不在ですすめられていく計画

日本でスタジアム経営というのは儲かるものではありません。ですから他の自治体の場合、Jリーグのチームやファンサポーターが専用スタジアムを求め関連企業などの多額な寄付などを取り付けて行政も腰を上げます。それに対し、ニッパツ三ツ沢球技場の場合、そのような草の根運動は見受けられていません。

行政側もまた改築なのか新設するのか、成し遂げたい目的がなく、色々検討を重ねていることが議事録を読むとよくわかります。

私が新スタジアム建設に反対する最大の理由

新スタジアム建設予定地には近隣住民が自由に使える広場や憩えるスペース、何より豊かな木々があるからです。三ツ沢公園は市内でも大きい公園に分類されますが、陸上競技場やニッパツ三ツ沢球技場、テニスコートなど数多くあり、子どもと自由に遊んだり、犬と歩いたり過ごせるスペースは多くありません。それがさらに少なくなるのです。

どんなところが新しいスタジアム建設予定地なのか動画を撮影しましたので、よかったら見てみてください。

市民の意見募集が行われた

2022年8月、横浜市は下記意見募集を募りました。しかしこの意見募集はひっそりと行われました。横浜市は三ツ沢公園から200mくらいの範囲で、近隣住民に緑色のリーフレット6000枚を配布したそうです。

意見募集リーフレット(表)

横浜市は2年前から2つの設計事務所と40回以上の打ち合わせを重ねてのタイミングで市民の意見募集です。この意見募集には何をする公園再整備なのかも新スタジアムがどこに建てらるのかも情報を提示していません。あまりにも誠意のない、カタチだけの意見募集です。裏面は、まるで不要な施設を潰すためのアンケートです。
あまりにも不誠実な市民意見募集でした。

私は8月に2度、横浜駅西口で街宣をしチラシを配り
多くの方々に知っていただきました。

市民意見募集の結果

三ツ沢公園は神奈川区にありますが西区と保土ヶ谷区にも隣接しています。居住区別の集計だと神奈川区と西区、保土ヶ谷区在住の方々が多いことがわかります。短期間でしたが多くの方に関心を持っていただけたこと、さらに「意見を出す」という行動をしていただけたことに希望を感じました。

川崎市の等々力緑地の再整備計画と比較すると横浜市のものは行政の熱量も方向性も市民への配慮もあらゆるものが数段階見劣りするように感じました。

三ツ沢公園再整備計画は今後もすすめられていきます。引き続き横浜市の動向に注視したいと思います。

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