20211119|満月
もう全て忘れそうだ。
帰ってきた。昨日まで旅していたんだっけ。よくわからない。
あの時の今はもう会うことはない。あたりまえか。
何を得たのか、どういう意義があったのか。総括する予定もない。これから立てていく企画の中に無意識に内包されるのだろう。
これからわたしがもし素敵なものをつくれたのなら、それは素敵なものと出会ってきたという結果なんだ。そこで理解ればいい。
手触り。
きっと手触りを感じたかったんだ。身体性について語ろうとするやつが、ずっと部屋の中でツルツルのiPadの表面だけ触っていてもなんの説得力もないもんな。
手触り。
世界と濃厚接触すると汚れる。
interaction、循環、そんな高尚な言葉を使わなくても「わたしが踏み込むする時、同時にわたしも踏み込まれる」というフィードバックをダイレクトに感じる快楽。
「これからあなたを穢しますが、わたしも同様に穢されて構いませんよ。」
その挑発的な無防備さの向こうで濃厚接触する、
食し/食される手触り。
そうして汚れたら洗い流す。
そして元通りだ。
いや、まさか。
何も元通りじゃない。穢れ、禊がれていった一連の過程・その流れのある一点を切り取ることはできない。手に取ることもできない。
今、わたしの名前を呼ぶ。
新規作成のウィンドウが開く。
さっきまで描いていたわたしは自動保存されたかもしれないけれど、あたりにファイルを見つけることはできなかった。きっと英数字の羅列みたいな名前で階層の深いフォルダに格納されてるんだ。
困った時にしか探しに行かないだろうし、クリックしても復元可能かどうか定かではない。
継承されたのは手触りの残響だけだ。
きっともう一度触れたらわたしは思う。
「この感覚は知っている」
そういうことだ。
ここまで書いて急に出かけることになったので
もう言い残すことはない。あったとしてもすっかり忘れてしまった。
もう次の章が駆け出しているから、過去のことなんて振り返らなくても過去は今再演されるだろう。
だからもう今を再生することに矛先を向けるよ。
では唐突に終わろう。
旅は終わった。
旅はまだ続いている。
終わらない旅の終わりに期待して、
さようならまた明日。
0story サカキミヤコ
#諸国漫遊2021
広大な仮想空間の中でこんにちは。サポートもらった分また実験して新しい景色を作ります。