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踊らされるよりも、ヘタでも自分で踊りたい

いま思えば

私は「うちなーむく」です。うちなーむくとは、妻がうちなんちゅ(沖縄の人)で、夫がないちゃー(内地の人)のことです。

私は、今思えば、学生結婚でした。なぜ「今思えば」なのかというと、日本でいう学生らしい年齢でなかったからでしょう。私は当時、33歳で大学院の博士後期課程に休学を繰り返しながら在籍していましたし、妻は27歳で修士課程の1年生でした。そして、私は当時は研究よりも仕事を頑張っていたので、アイデンティティとしての学生意識は小さかったのだと思います。

当時、私はパラオ共和国というところで働いていたので、妻の実家で沖縄式の結納をしたのち、その年の3月にパラオの日本大使館に婚姻届けを提出しました。そして、ほんの少しの期間ですね一緒にパラオで暮らし、妻は沖縄の大学院に向けて旅立って行ったのです。結局、結婚式もしていません。

新婚1年目から別居生活です。ただですね、私たちの感覚は「一緒にいられるときには一緒に楽しむ」、そして離れて暮らすときは「それぞれ楽しんだ経験を共有する」ということを旨としている気がします。その後も、私がアフリカ、妻が沖縄というそれぞれの時間もありました。

アフリカの生活を楽しんだ後、私は40歳で日本の大学教員の職に就きました。約10年間、一番長くひとつの場所に滞在しました。結婚するときの妻の夢は、いろいろな国で暮らしたいというものでしたが、日本の地方で国際交流の仕事をしつつ、自然に囲まれた生活を経験できたことも、なかなか豊かなものだったそうです。

次のステージへ

10年経って、子どもたちも少し大きくなり、私たちも次のステージに向かおうかという気持ちになってきています。妻は、実家の先祖が残した歴史や土地をなるべく次世代に繋ぎたいという希望があり、そのためのビジネスを始めるために沖縄に戻る計画を立てています。

私はそのプランに賛成です。やはり、歴史と物語は子どもたちに継承していないと、その価値を知らずに切り売りしたり、物語自体が失われます。そして、ただ相続することも財政的な難しさがあります。ご先祖から受け継いだ価値を維持していくためにも、ビジネスを展開していく必要があるでしょう。

実は、私の子どもの時の夢は、「社会的ビジネス」と「お金に直結しないような研究」でした。

たぶんですね、政府もお金にならない研究には研究費も出したくないと考えているかもしれません。そして、お金につながる研究に携わりたい人もたくさんいるかもしれません。

私はけっこうニッチが好きなので、競って皆が取り組むことよりも、マイナーだけれども、シンプルかつ遠い子孫がヒントにしてくれるようなことを研究したり、その過程を自分自身も楽しめることは贅沢な時間だと考えています。続けられたらいいなあと心から思います。

なので、私にとって最もストレスを与える人は私にとって興味もない競争を吹っ掛けてくる人です(笑)

日々彼女の話を聞いていると、妻もニッチな研究の話が好きなのです。たぶん。ただ無理してつきあってくれている可能性もあります。しかし、彼女のこれまでの経験の中で、それよりも「社会的ビジネス」に強い関心を持ち始めているように感じます。

互いが分身

けっこう昔から思っていたのですが、妻は私の分身的なところがあります。妻が私をそう思っているかは知りません。私と関心領域が近く、かつ私があまり得意としないところに優れた能力があります。

彼女にはお金にならない研究に耐える根気はありませんが、私には、お金にならない研究に打ち込む根気と鈍さがあります(笑)

私は、妻が社会的ビジネスをやってくれると、そこから経験や楽しさを共有してもらえると考えています。一粒で2度おいしい。私は、彼女の社会的ビジネスでの経験を聴いたり、時々沖縄に行って手伝う(邪魔する)ことが出来るのではないかとワクワクしてしまいます。

このワクワク感は、いつも一緒にいられない寂しさと同じくらい大きいものですが、嫌なことだけでもありません。

世界のうちなんちゅ

息子は沖縄の従兄と同じ学校に通いたいと言っているので、妻についていくでしょう。娘は、地元の友達と一緒の学校に行くために受験勉強を頑張っているので、そうなれば私と生活するのでしょう。

内地とうちなーの間で、しばらく離れて暮らすことにもなりますが、世界中どこにいても繋がっているという感覚も、「世界のうちなんちゅ」の歴史的物語に関係しているのかもしれません。

そうそう、私のもう一つの夢は、定年退職後に、庭で収穫したパパイヤ、マンゴー、スターフルーツ、ドラゴンフルーツ、タンカンなどのフルーツをもいで朝食を食べ、地域の青少年と語り、オジーオバーとコーヒー飲みながら話し(自分もオジーだろうけど)、妻が奏でる三線を聴くことでありました。

世の中、いろいろとしがらみもあるでしょうが、誰かに踊らされるよりも、下手くそでも自分で踊ってみようかな、と想うのでした。

#もしも叶うなら

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