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でとへ

些細なことなのだが、気になりだすとどうしても調べたくなる厄介な性格だ。
あるサービスエリアのトイレで気になることが発生した。
立ち位置に立って前を見ると「一歩前でおねがいします」と表示されている。

隣の立ち位置の前には「一歩前へおねがいします」と表示されている。
「で」の方は明朝体、「へ」の方はゴシック体で書かれている。違う人が書いたのだろうなと勝手に推測している。

そこでどういう趣旨で書いたのか気になって仕方がない。早速携帯の大辞林のお世話になった。

で〔格助詞「に」に「て」の付いた「にて」の転。中古末から中世以降の語〕
[一](格助)
①動作・作用の行われる場所を表す。㋐「デパート━買い物をする」「日本━初めての実験」
㋑「…でも、…でも」の形で、場所を列挙する。「日本━も、アメリカ━も、青少年問題には悩んでいる」
②動作・作用が行われる時を表す。㋐動作が行われる時期を表す。「では」「でも」の形をとることが多い。「現在━は、簡単に解決する問題だ」
㋑動作・作用の期限・限度を表す。「新幹線は一時間━二百キロも走る」「一〇分間━答えてください」
③動作・作用を行う時の事情・状況を表す。「はらぺこ━帰ってくる」「挨拶のつもり━声をかけたのだ」
④手段・方法、または道具・材料を表す。「ペン━書く」「汽車━行く」「木と紙━できている日本の家」
⑤原因・理由・動機を表す。「火事━一文なしになる」「撃たれた傷━死ぬ」「老師の一言━さとる」
⑥動作・状態の主体を表す。「委員会━作成した原案」「そっち━ほれても、こっち━いやだ」
(大辞林)

「で」は中世以降のかなり古い言葉だと理解した。「にて」の転用だったのだ。
意味は①と②を合わせたくらいの意味か。
「用を足すときは一歩前に出ろ」ということだと理解した。

それでは

について


へ(格助)
〔現在では「え」と発音。「あたり」の意の名詞「へ(辺)」から〕
①動作・作用の向けられる方向を示す。「東━進む」「佐渡━佐渡━と草木もなびく」「秋風に大和━越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ/万葉集2128」
②動作・作用の向けられる対象を示す。「君━のお願い」「当局━陳情する」「巻物三巻を作りて、院━まゐらせけれども/平治物語上・古活字本」
③動作・作用の帰着点を示す。「東京━着く」「山頂━たどりつく」「また仁和寺━帰りて、親しきもの、老いたる母など、枕上によりゐて/徒然草53」
④動作・作用の行われる場所を示す。「使いの者が玄関━来ています」「郎等ガオ庭━祗候ツカマツッタコトモ/天草本平家物語1」
⑤(「…たところへ」「…ているところへ」などの形で)動作・作用の行われる事態を表す。「ちょうど寝たところ━、お客が来た」「風呂にはいっているところ━、電話がかかってきた」〔 上代からある語で、①すなわち移動性の動作の目標を示すのが原義。 ②~④は中世以降見られるようになったもの。「へ」は、時代のくだるに従ってその用法を拡大し、現代では同用法の「に」とともに広く用いられるようになった。しかし、「へ」は「に」にくらべて、その方向指示性・移動性をより強く表す語であるといえる〕→に(格助)
(大辞林)

は意味が深く①②③④の合成のように思える。
「その方向で用を足すように、その方向に進み、その方向にたどり着いたら、そこで用を足せ。」

「で」は用を足す直前でもう立ち位置に立っている人に言うセリフで、
「へ」は立ち位置がまだ定まっていない人に言うセリフだ。

日本語は奥深い


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