ヘレンド
さりげなく、カプチーノを頼んだ妻に『ヘレンド』を使ってサービスしてきた。妻はご機嫌だ。
クリームも「これでもか!」というくらい山盛りになっている。
コーヒーカップやシュガーポットには『マイセン』も使われている。店舗装飾も古典風に決めている。
なかなか落ち着く店だったが、隣に座った女性二人が大きな声で家庭の事情を話している。
他人の私に、息子の仕事の状況とお嫁さんとの関係がすっかり伝わってきた。
時々バックグランドで流れている「テレマン」が聞こえてくる。
極力聞かないようにしているが、なにせ声の音量がでかいので耳に入ってくる。
10分ほどすると又大きな声になり、お嫁さんの悪口が聞こえてきた。
話が振り出しに戻っている。
相手も相槌を打ちながら、自分の話を繰り返している。
お互いに相手の話を全く聞いていないのだ。ただ延々とお互いの愚痴を並べている。
ストレス発散なのだろうが、こちらに少しストレスが溜まってきた。
私のカップは『マイセン』だった。『マイセン』は中国の青磁を模倣したものだが最近は完成度が上がっている。
ブルーオニオンは、柘榴をコピーしたのだけれど『当時の職人が柘榴を知らなかったので、オニオンに置き換えてしまった』という話が有名だ。
ある日の午後、素敵な食器と、素晴らしい調度品、美味しいコーヒーと、気持ちの良い音楽を楽しんだ。
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