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博多までタクシー

夜中博多に向かって歩きはじめた。どうして暗くなってから40kmもある夜道を歩こうと決めたのか記憶にはない。ただ歩きたかっただけ。健脚でも8時間ほどかかる行程だ。考えずに行動を先に起こすのは、今始まったわけではなさそうだ。

街中を歩いているうちは灯りもあったのではかどった。車が時々横をすり抜けて行った。八木山峠に差し掛かると、ほぼ暗闇に包まれた。これからまだ何時間も歩くことになる。体力は十分だが前方の暗闇を見つめると、気分的に怯んだ。

その時、後ろから来たタクシーがそばに止まった。「こんな夜中にどこ行くの?」びっくりしたが「博多まで行くつもりです」と言ったら、「乗っていきなさい」と助手席のシートに乗せてくれた。

道中、車の運転についていろいろなことを教えて貰った。「車は、夜中が一番運転しやすいんだ」意味がわからずに「どうして?」と聞いたら「車が少ないので道幅一杯道路が使える」とか「対向車がライトを点けているから、遠くから視認できる」と言うことで『アウトインアウト』などプロの運転テクニックを教えて貰った。

どうしてこんなに親切にしてくれるのか聞いたら、「八木山峠はお化けが出ると仲間からの言い伝えがあって、一人で帰るのが怖かった」そうだ。

親切な運転手のおかげで薄明かりの中、筥崎宮の前につくことが出来た。

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