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喫茶店

コーヒーが大好きなので喫茶店には時々行く。最近は隣との間隔がひろくとれる店を選んでいる。

環境で選んでしまうと美味しいコーヒーに巡り合うチャンスが少なくなる。美味しいコーヒーを出してくれる店が非常に少ないのだ。

私の好みを一瞬で見抜いてその日の体調に合わせて美味しいコーヒーを淹れてくれた先輩は急に亡くなってしまった。

私は浅焼きでコクのある味が好きだ。一番難しい注文だそうだ。彼はモカマタリを中心にブレンドしてくれた。酸味があってキレの良いのが特徴だった。彼が淹れると甘みが出てくる。「最近はマタリが入手しにくくなってハラリばかり」と嘆いていた。

そういえば自分で淹れるようになってモカマタリが入手できなくなっていることに気がついた。いや、一度買ったことがあるけど全く違うものだった。最近店頭ではエチオピアモカとしか書いていない。産地で何か異変が起こっているに違いない。

先週、所用があって山道を走ることになった。鹿や猪が出そうなところだ。20年ほど前に野ウサギをはねたことがある。看板に気がついた「古民家喫茶」。ちょうどお茶どきだったので寄ってみる気になった。

道路はだんだん細くなる。車幅一杯の道を走ると広場に出る。見渡すと古い建物がある。後で聞いたところによると築後200年だそうだ。

ご年配の女性がオーナーだった。「これは失敗したな」と諦めていたところ、丁寧に淹れている。一口飲んで驚いた。ここ20年くらいの内で最高に属するほど美味しかった。マンデリンがベースだと思った。

思わず失礼なことを言ってしまった。「全く期待していなかったのに、こんなに美味しいコーヒー飲んだのは久しぶりです。どこで修行したのですか?」


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