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まえ田

9月の終わり、久しぶりに新宮『まえ田』に行った。

とにかく食べ物の美味しい和歌山だから、どの店でも良かったのだが、馴染の『まえ田』にした。

このお店は時々、研究中の料理を出してくれるのも楽しみの一つだ。

5時開店のお店なのに、寄り道をしてしまって、店に着いたのが5時5分だった。
中に入ったら、座敷は満席でカウンターも二人分だけしか空いていないのだった。

予約をしなかったのがいけなかったのだが、顔を見たご主人がカウンター席をすすめてくれた。

すぐ後から3組ぐらい客が入ってきたが、皆ウェイティングになってしまった。

季節の変わり目なので何があるか想像できない。料理をおまかせしたところ、少し考えたご主人がいきなり握りを出してきた。
長年通っているがこの展開は初めてだった。多分、美味しいネタがあるのだと思う。

寿司職人ではなく板前の握る寿司は美味いのを知っているので楽しみだが、最初に赤身、中トロ、トロが出てきた。

寿司屋では普通マグロと鮭は頼まないんだけど、おまかせなので食べてみようと思った。

これが大正解、今まで食べたことがない味だった。甘味があり、熟成されているが生臭さがない。思わず「美味しい」と言ってしまった。
ご主人が『ニヤッ』と笑ったのを見逃さなかった。

吸い物に『土瓶蒸し』が出てきたが、香りが桁違いにすごい。5cmくらいのシミのない松茸がたっぷり入っている。隣に居た常連客が同じものを注文したのでその凄さがわかる。

妻が『クジラ』が欲しいと言っていたが、供されることはなかった。メニューに書いてあるので、手持ちはあるが、美味しいものがなかったのだと思う。
二年前に行った時に出された『マッコウクジラ』は絶品だった。

食事の間のご主人との会話で、うちの冷蔵庫に眠っている『へしこ』の新しい調理法を教えていただいた。サンプルを供していただいたが今まで味わったことのない新鮮な味だった。すぐこれの発展形を思いついたので早速帰ったら実験してみようと思った。

美味しい料理をいただいた後、すぐ帰途に着いたが、5時間かかった車中は和やかだった。


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