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百条委員会の意味

西日本のある首長のパワハラが問題になっている。残念ながら私はパワハラの加害者にも被害者にもなった経験がある。しかしもしも先に被害者になっていたら、加害者になることはなかったと思う。

一般にパワハラ問題は、加害者か被害者のいずれか一方に100%非があるケースは少ないと思われるが、少なくとも被害者が声を上げるには、大変な勇気と特別なルートか手段が必要であることに疑問の余地はない。

公益通報者保護法
(目的)第一条 この法律は、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置等を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする。

公益通報者保護法の条文を見る限り、直接対象となる法律は
一 刑法
二 食品衛生法
三 金融商品取引法
四 日本農林規格等に関する法律
五 大気汚染防止法
六 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
七 個人情報の保護に関する法律 となっている。

当該県の公益通報窓口は、法令違反に関する処分や勧告を行う第三者的立場の行政機関としての受け皿であり、本件のごとく行政機関そのものの内部告発の通報先としては想定されていないと思われる。きっと藁にもすがる思いで通報したのだろう。しかしその結果、懲戒処分を受けている。だからこそ、県議会が百条委員会を立ち上げるしかなかった。もし本件に公益通報者保護法が適用されるのであれば、かかる懲戒処分は明らかな法令違反だからだ。

公益通報者保護法
第二章 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等
第五条 
第三条に規定するもののほか、第二条第一項第一号に定める事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはならない。

加えて、いわゆるパワハラ防止法も”事業主”が主語で、この法律では公務員内部のパワハラ問題は処理できそうにない。むしろ監督する立場だ。

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 (通称パワハラ防止法)
(目的)第一条
 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等(雇用管理上の措置等)第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

つまり行政自らの問題は問えない法令の構成になっていると解釈できる。行政は自分の身内にあまりにも厳しすぎないだろうか?選挙で選ばれた首長なら何をやっても許されるということまで民主主義は保障していないと思う。もう一方の代表たる地方議会がどう対処するのか、注目したい。


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