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【電力目線の開疎化】 第一章 電力ビジネスとは

第一章 電力ビジネスとは
 1-1 電力ビジネス戦略
 1-2 発電戦略
 1-3 送配電戦略
 1-4 小売戦略
  1-4-1 法人向け戦略
  1-4-2 家庭向け戦略


1-1 電力ビジネス戦略(note記事 https://note.com/j20364/n/n1871a6192b6f 参照)

①電力業界の市場規模
電力業界の約20兆円。電力小売関連だけでもこの規模なので、関連する送配電、発電のバリュチェーンを考えると経済への影響はものすごく大きい。企業でも、電気代はコスト施策の中でも重要トピックにあげられるランニング費用になることが多い。

 ②電力のビジネスモデル(電力小売を中心に)
  電力小売に限れば、作って(発電)、運んで(送配電)、売る(小売)と他の業界と変わらない単純なビジネスモデル。
  原価構造もものすごく単純にいえば、「発電コスト」「送配電コスト」「管理コスト」の3種類。しかも

・「発電コスト」がコストの5割以上(徐々にこの比率が低下傾向!)
・「送配電コスト」が3〜4割で規制料金

  というかなり特殊な原価構造の業界。送配電コストは、後で例外事例も出てくるが基本的に規制で決められた料金なので、競合との差別化は難しい。

となると、発電コストでどう差別化するかが電力ビジネスの大きなテーマになる!

③電力ビジネスの特徴
   なんといっても「(30分)同時同量制度」。
   電気は消費すると同時に発電が必要な商品。ただリアルタイム同時同量にすると新規参入のハードルがあまりに高いので30分単位で、消費と発電をあわせるルールになっている。

  上記を踏まえて、「発電戦略」「送配電戦略」「小売戦略」に分けて記載していきたい。


 1-2 発電戦略(note記事 https://note.com/j20364/n/nb4b4c45e8cbf 参照)

今回は①発電戦略に焦点を当ててみます。

コストの半分以上を占める発電コストは競争戦略上かなり重要です。

普通のビジネスと同様「安く調達」すれば差別化できるのですが、大量購入で安く買って在庫しながら販売すればよい、、というわけにはいきません。

ここで「30分同時同量」ルールが影響してきます。「需要家が使っているまさにその時間帯に、同じ量の発電を、しかも安く」調達できて初めて差別化ができます。

では、いったいどうやって発電、調達するのか?ざっくり言うと選択肢は

①自社発電
②常時バックアップ(地域電力会社と契約) https://ppsnet.org/glossary/43505
③相対契約
④卸市場調達 http://www.jepx.org/
⑤インバランス(ペナルティ)https://pps-net.org/glossary/54170


の主に5択です。⑤も最近意図的にやってる事業者もいそうなので入れてみました。①以外は自分以外から調達する方法になります。

ベース電源、ミドル電源、ピーク電源から調達をする考え方がスタンダードだと思いますが今回は思い切って端折ります。

端的にいうと、将来の需要を予測したら、一日48コマ(30分単位のため)のそれぞれの需要について①〜⑤で1番安い電源を当てはめていくことになります。

ただ、、、
需要予測の難しさは置いておくとしても、

例えば、自社発電が高いからといってずっと使わないと不良資産になるだけになりますし、常時バックアップも電力会社との契約なので相対契約と同様に契約上の制限があります。④の卸市場調達は比較的柔軟にできますが、乱高下する可能性もあり、価格の安定という面ではマイナスです。

上記からも、ある程度遠い将来の需要を見越して、①〜④のバランスをイメージしつつ、直近の需要を微調整していくことは発電戦略では重要になります。

少し前は卸市場価格やなんとインバランス価格まで安かったので、ほぼ④だけみたいな新電力もあったと思いますが、2017年度の冬や2018年度の夏に痛い目に合ってると思います。

「結局どう調達したらいいの?」との声が聞こえてきそうですが、残念ながら私のようなニワカ業界人では概要の説明しかできないのが現状です。

この道のプロの方は、長期予測→中期予測→短期予測で、電源獲得戦略を地道にされてますし、現在は電力先物市場、ベースロード電源市場ができてそれをリスクヘッジに利用したり、連系線の通告変更などを利用して他のエリアの電源を持ってきたりと、常に多様な選択肢をとれるよう配慮されてるように見えます。

 


1-3 送配電戦略(note記事 https://note.com/j20364/n/nc2f441c5324e 参照)

送配電コストは、業界では「託送料」と言われて、地域電力会社の送配電部門が設定する規制料金になります。

とすると、すべての電力会社に同じ単価で課金されるため差別化要素はない、、ように見えますが、下記リンクを見てください!

http://www.tepco.co.jp/pg/consignment/notification/pdf/ryoukint2804-j.pdf


まず、託送料は

①基本料金
②電力量料金

の2種類あり、それぞれ地味に工夫は出来そうです。まず簡単な②から。

実は②には、一日中同じ単価のものと、昼夜で単価が異なるものがあります。夜の電力利用が多いユーザーには昼夜別単価の託送料を選択することで、少しですが送配電コストが下がるかもしれません。

次に①ですが、「実量契約」という項目がありますが、こちらは計測時点の過去1年のピーク電力kWで算定する契約であるため、例えば会社で13時丁度に電気を点け始めるせいで、ピークが立つことが意外にも多いのですが、この時間を30分ズラしたり、実は点けっぱなしにしたほうがピーク電力抑制になったりしてます。kWhだけをみた省エネのマイナス面ですね。

上記のように、現状の仕組みでも工夫が出来ますが、なんと

送配電コスト= 0円

にする方法があります。簡単ではありますが、発電所を需要家のところに持っていけばいいだけです。つまり、屋根上太陽光などです。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/spv/1802/05/news025.html


これは昔からできたことですが、発電コストがあまりにも高く、「太陽光の発電コスト+管理コスト」が「系統電力の発電コスト+送配電コスト+管理コスト」より高くなってしまっていたのでできなかっただけ。
実は今やっとこのあたりのコストがトントンになってきたところで、太陽光の第三者保有モデルが徐々に日本で広がりはじめてます。

屋根上太陽光のコストは今後下がり続けることが予想されるので、この流れは不可逆かと個人的には思ってます。

あと、2020年度以降に託送料の見直しがあります。想定されているのは

①基本料金の配分アップ
②発電側課金の導入

が大きなトピックです。①は相当なインパクトがあると個人的には思ってます。実は送配電コストの8割は固定費相当なのに、託送料の基本料金相当は3割程度しか回収できない単価に設定していたのです。過去の経緯があってこうなってるのですが、電力需要が減る中で基本料金で回収しないと日本全体の送配電コストはペイできなくなります。そこで、基本料金の負担割を固定費比率に近づけようという話になりました。

背景が長くなりましたが、基本料金の単価は、ピーク電力に左右されるので、

ピーク電力を下げる

戦略になります。しかも、蓄電池や電気自動車が普及しますし、IoTによる制御も可能になるので、テクノロジーを利用してピーク電力を下げる戦略はメリットが大きくなってくると個人的には思ってます。自分が今狙っているのもそこになります。

②の発電側課金ですが、細かい説明は端折りますが

全量売電→発電効率が鍵、高圧低圧の小さい発電所が有利
余剰売電→住宅が有利

になりますし、発電したものを系統に流すことに課金される考えなので、「系統に流さない=自家消費」のメリットは①②ともにメリットのあるソリューションになります。

私の文章力の拙さでこのインパクトがうまく伝わりませんでしたが、電力会社の経営に物凄いインパクトを与える一大事と個人的は考えてます。

是非、託送料の制度を考慮しながら、電力会社の動向をウォッチしてみてください!

http://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_network/pdf/180604_report.pdf


 1-4 小売戦略(note記事 https://note.com/j20364/n/nd617740d1082 参照)

小売戦略は4Pスキームで考えようと思います。placeやpromotionもものすごく重要かついろんなトピックがありますが、今回は①productと②priceに絞って書きます。

①product
電力はなんといっても、安定供給できることは第1条件。ただ、ここは送配電が担保しているため小売電気事業者で基本的に差別化は難しい。メンテナンスなどいろんなオプションサービスもあるが、今のところ

・バンドルサービス
・グリーンメニュー

が2トップのように思います。

 1-4-1 家庭向け戦略

バンドルサービスは主にマス向けで、ガス、通信などの月額課金制のものとの親和性が高く、一括請求とまとめて割引的な金銭メリットも大きい。
事業者としても、決済コストが多少効率化される分メリットはある。


 1-4-2 法人向け戦略

法人向けでいえば、まだドライブしていないが、パリ協定、ESG投資、RE100のキーワードからグリーンメニューが普及し始めると思う。

東電アクアプレミアム
http://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2017/1386201_8662.html


エネット グリーンメニュー
https://www.ennet.co.jp/news/detail?news_id=90


②price
いかに価格を安くするかだが、電力会社の場合特に「安く提供可能な電気の使い方をしているユーザーを探す」のが新電力の王道のように思う。発電リソースが各社異なるため、時間帯ごとの発電コストが違う。なので、自社の電力が余った時間帯や安く調達可能な時間帯に多く電力を使うユーザーを探して提供するため、業種などかなり細かくターゲッティングしている。

小売戦略はさらっと書いてしまったが、電力で言えば次に書く電力の4価値を意識して差別化を考えるといいと思う。

  
 



電力関連を中心にほぼ毎日気づきを書いてます!少しでもお時間があれば立ち寄ってご一読いただけると嬉しいです!