現代のゲームはプレイヤーに「上手さ」より「想像力」を求める
ゲームが遊ばれるようになり40年以上、ゲームはゲーマーに「上手さ」を要求し続けた。
正確なコマンド入力、鋭い反射神経、マップやパズルを覚える記憶力。
特にアーケード時代は「上手さ」こそがゲーマーという人種の絶対的なステータスだった。ゲームが上手いヤツがゲームをより長く、深く楽しめる。それが当然という時代だった。
だが今はどうだろう。据置機がメインとなって、老若男女問わずゲームを遊ぶようになり、かつての「上手さ」を求めるようなハードコアなゲームは激減した。
懇切丁寧なチュートリアル、ほぼ自動でコンボを繋げてくれるアクション、体力も弾薬も自動回復、誰もがボタンを押すタイミングに心血を注がずとも、ゲームを楽しめる時代になった。
代わりに、ゲームがゲーマーに要求したのは「想像力」である。
無数のゲームが、「プレイヤーが自分の意志で行き先を決められる」オープンワールドを採用し始めたのだ。
更に、想像もつかない攻略手段も無数にあり、物語も純文学さながらに難解になるなど、ゲームはプレイヤーの左脳よりも右脳を試すようになったのである。
その証拠に、2010年代のゲームは巧みに想像力を刺激した作品が評価されている。世界中で社会現象となった『Minecraft』、2017年でGOTY総なめした『ゼルダの伝説BotW』、2018年のヒューマニティをゲームに取り込んだThe Game Awardsノミネート作品等。いずれも想像力を刺激する高度な作品だったと私は記憶している。
一方、それは自ら創意工夫をせずに、ただ決められたルールに従って遊ぼうとする想像力の欠けたゲーマーは肩身が狭くなりつつあるのではないか、そうとも考えられると思う。
それはまるで、硬派なアーケードゲームが初心者お断りであった伝統的なゲーマーの生態系に、非常に似ているとも考えられるのだ。ただ求められるのが「上手さ」から「想像力」に変わっただけで。
現代のゲームを楽しむ上で求められる想像力とは何か。具体的に何が、どのように想像力を求めるようになったか。今後のゲームはどう進歩していくのか。
「上手さ」より「想像力」を求めるようになった現代ゲームについて今回は解説しよう。
2011年に正式版がリリースされた『Minecraft』。
1平方メートルのポップなブロックだけで構築された砂場に、独自の生態系と経済体系を組み込むことで、この作品は世界中の子供から大人まで時間を吸い上げまくった傑作サンドボックスだ。
この作品は、「面白くなる予定の要素」で満ちている。
ブロックには数百種類あり、それらを使って何を作るも自由。その上、飢えと渇きという概念がプレイヤーの本能と想像力に訴えかけ、畑を作ったり坑道を作ったり、空中から自分の同胞がひたすら落下死する黒棺を作ろう等とプレイヤーは考えるのだ。
だが、何一つとして「面白い要素」はない。例えばゾンビを倒したとしよう。肉と経験値を落とす、それは自分がより有利になるためのリソースだ。だが、それで終わりだ。そこに喜びや面白さはない。
何故なら、このゲームには(後から便宜的に付け足したエンダードラゴンを除くとして)「ゲームクリア」が原則ないためだ。
だから何百匹ゾンビを倒しても、それによってゲームをクリアするというゴールには、1mも近づけない。そのリソースの使い道は完全にプレイヤーに委ねられているのである。
言うまでもなく、『Minecraft』は面白い。筆者も猿のようにハマった作品だ。21世紀を代表するゲームだろう。
だが、非常に想像力を求める作品だ。
プレイヤーの想像力が尽きた時、この作品は死ぬ。何を作ろうか、どこへ行こうか、誰に会おうか、そうした想像力に基づく欲望が尽きた時、このゲームは本当の意味でゲームオーバーであり、ゲームクリアを迎えるのだ。
そのタイミングは、本当に人それぞれである。何千時間と遊んでも尚クリアできない人もいれば、数時間遊んだだけでクリアしてしまう人もいる。
問題は後者だ。
「豆腐ハウス」を作る人間は指を刺され、どんな豪華な建造物も素材が丸石では鼻で笑われる。確かに、あの作品では「想像力」こそがステータスだった。
最初、『Minecraft』を購入する時、多くのプレイヤーは夢を抱いて20ドルを支払った。空に浮かぶア・バオア・クーを作りたいとか、クラシックコンサートをレッドストーン回路で実現したいとか、そんな夢である。
が、殆どのプレイヤーはその夢の前に挫折した。Youtubeの動画で見るような建築物は、ごく一部の腕前と想像力を併せ持つ一流プレイヤーのみに許されたもの。現実は夢より遥かにミニマムで、何かコレジャナイ感あふれる、巨大ベイブレードなのだ。
その過酷な現実を、残酷なまでに如実化させたのが、『Minecraft』ベータ段階から搭載された「マルチプレー」である。
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