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Jiniの選ぶ2022年ベスト映画ランキング10本

2022年は、筆者にとっておそらく人生でもっともゲームにお金と時間を費やした一年だった。寝ても覚めてもゲーム、ゲーム、ゲーム。その本数はたかだか100本ちょっとだけど、全力で批評をやるにあたって、全力でインプットをしてみたいという夢が叶った一年だったと思う。故にGOTY記事は自分の中でも会心の出来だと思っているし、実際多くの人に読んでもらえて嬉しかった。

ただ、筆者にとってゲームと同じぐらい大切なものが、映像、音楽、文学といったゲーム以外の芸術、そして虚構である。その上で2022年の映像文化は本当に豊作だったと思う。ぶっちゃけゲームはかなりどん詰まりの様相があったが、逆に映像はあちこちで花火をあげてて驚いた。

そこで今回は、あえてゲームではなく映像作品から、筆者の知りうる2022年最高の作品を1位~10位まで並べたランキングとして紹介したい。ゲームと同じか、むしろそれ以上に、現在の映像作品のレベルは上がり続けており、いかにゲーマーであってもこれを見逃す手はない。この記事をきっかけに1本でも新たに作品に触れてもらえれば幸いだ。

なお、ここであえて「映画」といわず「映像作品」というのは、言わずもがな、既に劇場/ストリーミングの垣根が消え、それに伴って映画/ドラマや実写/アニメの垣根が無意味なものになっているからであり、筆者は今回のランキングにあたっても、これらの形式や媒体を全てごっちゃにしてリストアップしている。(タイトルは「映画」だが、ややこしいのでこのままでやらせてくれ)


10位:シン・ウルトラマン

期待の出演陣、期待のIP、期待のブランド、ここ一番というタイミングで最高のアイロニーをぶつけた樋口監督の度胸だけで、正直この映画は評価されていい。とにかく一挙手一投足が露悪一歩手前のユーモアを、ウルトラマン(特にセブンの)SF的モチーフでコーティングしている。構成の不格好に関して思うところがないではないが、とにかく笑わせてもらえただけで十分だ。

そのアイロニーの視点は、特撮のIP的な構造、邦画の銀幕的な構造、日本の政治的な構造、もろもろ全てにぶつけられているのだけど、偶然にも世紀の失敗作『大怪獣のあとしまつ』と同じ目的を志向している。それでも両者を隔てたのは、それがユーモアであると観客に最後まで悟らせなかった点にある。まして自分から「これは冗談なので」と予告編で言ってしまうあちらは、その時点で失敗が確定していた。

ユーモアは、風刺は、本来ことばにすることが憚られる言説を、何とか伝えんとする加工技術でもあった。そして本作は、かつてないほどに進退窮まった邦画並びに日本社会において、正しくユーモアを実践し、成功した数少ない事例なのである。

9位:サイバーパンク・エッジランナーズ

ゲーム原作を映像化する事例は数あれど、恐らくここまで原作を尊重しながら、同時に原作への疑問を作品に昇華させた事例は数少ないだろう。

そう、筆者は『Cyberpunk 2077』の批評にて「サイバーパンクとは」という疑問の中で、特に本作がウィリアム・ギブスンやリドリー・スコットが作った「フェティッシュ」に囚われた結果、「パンク」と逆の保守的な温度感に落ち着いたことを批判した。一方、アニメーションを担当したトリガーは、アニメーションを革新しようと先走るあまりどうしても粗の目立つ作品が多かった。

この強みと弱みがハッキリした、しかしクリエイターとしてプライドと実力を持つ両者がタッグを組み、時に尊重し、時に喧嘩し、そうした切磋琢磨の末に生まれた『サイバーパンク・エッジランナーズ』が、見事に両者の欠点を魅力へ昇華した作品となったのは、とても祝福するべきことに思う。



8位:THE FIRST SLAM DUNK

批評家の宇野常寛が指摘するように、本作の達成とは3Dを大胆に使い、マンガの線画をオマージュしながら、大胆なカメラワークによって達成された「劇映画」のアニメイトである。そして原作の『スラムダンク』が持っていた魅力は「バスケットボールをプレイすること、そのもの」を知り、楽しむようになる若者の成長であり、それを動画で表現した最高の解答がこの作品だ。

そしてこれを実現した座組が、まず監督にマンガ原作者たる井上雄彦をすえつつ、作品実績には恵まれなかったダンデライオンアニメーションスタジオが制作を担当し、さらに主題歌および劇伴にはロックバンドの10-FEETという、いずれにしても「名作アニメ」と無縁の愚連隊同然であるのが興味深い。中でも10-FEETの劇伴は、主題歌の「第ゼロ感」をイントロ、Aメロ、Bメロ、サビとそれぞれ分割し、場面ごとに用いるという大胆な手法で、彼らにしかなしえない新たな劇判で盛り上げていた。


7位:NOPE/ノープ

ビデオゲームにおいて『Immortality』が「視る遊び」をインタラクティブな形に接続した同年に、ジョーダン・ピールが『NOPE』で成し遂げた映像ならではの、特にIMAXならではの「視る遊び」の先行を実践したのは、まるでビデオゲームにとって映画の「背中」をそう簡単に抜かせない覚悟を背負っていたとすら思える。

何よりも、あらゆるカットのカメラ、構図の練り方が尋常ではない。観客の導線をどこまで計算しているのか不思議になるほど、どの構図にも必然性がある。ゲームディレクター小島秀夫が本作を絶賛するのはこうした文脈を鑑みればごく自然の成り行きであり、ビデオゲームがまだ映画から学ぶべき「遊び」が残っている、いや増え続けている証左だろう。


6位:ベター・コール・ソウル(シーズン6)

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