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『22世紀の民主主義』 ブックレビュー

成田悠輔著 『22世紀の民主主義』を読んだので考えたことを書き留めておこうと思います。

難しくてわからない点もあったけれど、ところどころに出てくす「成田節」にちょっとクスッとしながら「そうだよなぁ」と共感できる点が多くありました。

選挙で社会は変わる?

日本の選挙の投票率が低いと最近よく耳にする。実際私も数年前までは「私1人が投票したって」と思って投票に行かなかったりする時もあった。でも最近HUCというコミュニティーに入ってメンバーの影響によって少しずつ政治にも目を向けるようになり投票には行くようになったが、でもそれでも「社会が変わるかもしれない」という実感はまだ持てずにいる。

そんなところで成田さんは「若者が投票に行ったところで社会は変わらない」と述べる。若者って高齢者に比べて圧倒的に数が少ない。そして、若者の支持政党を調査すると高齢者よりも自民党支持者が多いらしい。
だから変わらないのはただ単に数の問題ではなく、若者自身、そして政治の仕組み自体に問題があると言える。

人間に政治をさせない

そこでこの本に書かれている提案の一つは、「人間に政治をさせない」。
今の日本にはさまざまな問題が山積みになっている。LGBT、子育て、防衛、環境問題、IT化・・・数えきれないほどの問題があるが、その問題の重要度は個人によって異なるし、一人の政治家が全ての問題に取り組めない(量が多すぎて物理的にも対応するのは無理)。
私も選挙で投票先を選ぶとき、この政策はこの人の考え方に共感するし、でもこの政策についてはこの人、と一人の政治家を選ぶことに困ることが多い。

だからもう人間が政治をしない。各イシューや論点に全ての人が同じ影響力を持つ必要もない。
AIを使って価値判断の基準や目的関数を民意データから読み取る。そしてエビデンスに基づいてそれらを明確にする。(現在の)選挙は、政治家が有権者の生の言語化できる声を聞いてそれを吸い上げていくが、データは人々の意識しない暗黙の欲求や目的を吸い上げることができる。

そしてこのデータを使って無数のイシューや論点を同時並行的に対処して意思決定していく。そして一人1票ではなく100票とかにして、自分にとって重要なイシューに多くの票を投じる。

人間を信じ切らない

私が印象に残った点を簡単に上に書いた。人間て、やっぱり自分に都合が良いようにい解釈するし、今ある自分の地位は失いたくないし、現状維持バイアスもとっても強い。生きていく上で人間の感情って正しい道を見失わせる厄介なものだと思う。
それを意識した上で、AIができることは任せたら良いんじゃないかと思えた。機械は感情で判断が変わったりしない(AIが間違った判断をするような学習をする危険性はあるらしいが)、データをもとに進めていくことができる。

ここに挙げられた提案を、これから日本でどのくらい実現できるか、実現できないい気がして不安になる。でも、こういう方法があるということを知っているだけでこれからの私の行動のヒントになるかもしれないと思った。

そしてこの本を読んで最大の学びは、人間は余計なことはしない方がいい、機械に任せる、ということ。ルールを作るときも、人間の良心に頼るのではなくもしもそういう人がいても大丈夫なルールを作るということ。

希望は見いだせなかったけれど、「人間てこういうもの」と俯瞰してみることの大切さを気付かされた本でした。



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