書評 "年収は「住むところ」で決まる"

コロナ騒動によるオンライン会議の浸透で、あたかもどこにいても仕事ができる世の到来は、まさにフラット化する世界がやってきたように思いつつ、けれどもだからこそ人と会うことの重要性、いや、会うだけでなくて、ビジネスエコシステムの中に身体性を伴って存在していることがとても大事だということを身に沁みてしまってもいる。

2014年に世に出たこの"年収は「住むところ」で決まる"は、アメリカのイノベーション産業が集うサンフランシスコやシアトルやサンディエゴやローリー・ダーラム圏などを例に、地域資源とは全く無関係に集積する人的資源の重要性と、彼らが生み出すサービス業等への乗数効果の大きさを語った書籍だ。

僕は、日本のローカルには改めて地域資源が重要だと思っているし、どこにいても仕事はできるとも思っている。けれども、地域資源は地域にとっての外貨を稼ぐ貿易部門として存在していないとダメだし、どこにいてもとはいえ知の集積地にいなければイノベーションは起こらない、とこの書籍から学んだ。

ただし、貿易部門とはいえ資源には限りがある。資源を切り売りしてビジネスするだけでは資源の成長量しか経済成長はできない。そこから得られる知をどれだけ他に専門サービスという形で売れるかも重要で、そこにハイレベル人材の採用力が試される。

で、エネルギーは地域資源をどう生かしてビジネスできるのかという問いを投げかけられているし、そのエネルギービジネスが制度の変化によって大きくデジタル化しようとしており、知の集積は非常に重要になっているのだ。

そして、自然エネルギーは地方が最前線だし、東京が圧倒的な知の集積地だ。僕は、東京にいなければと思う。が、家庭の事情もあってすぐには住めず、東京の知の集積にアクセスできなかったのだけど、オンライン会議の浸透でできるようになりつつある。だからこそのzoom雑談が重要だ。

これからのローカルが、そして僕らの会社でさえもどう生き延びていくのか。ちょっと考えさせられた書籍であった。

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