その無理な依頼がみんなを不幸にする ~弊社は半年前に廃業予定だった~

元顧客からのとある依頼から弊社が廃業寸前まで追い込まれた経緯とは

 ※当事者のプライバシー保護のため、詳細に記載することを控えております。また本件に関していかなる質問もお答えかねます。

 今回、弊社が廃業寸前に至った経緯は以下のとおりです。

① 元顧客(保険契約者)から事故の相談
② 不適切な保険金請求(保険金詐欺に該当する案件)だと察知し断る
③ 自分自身、周囲の身の危険を感じる無理な依頼
④ 保険会社への相談無く、事故の報告
⑤ 保険会社の捜査
⑥ 保険会社により、請求は否認。捜査の対象は代理店へ。
⑦ 代理店登録解除ならびに募集人資格20年間停止

 ざっくりとこのような経緯です。

 そして約半年間、保険会社に対する釈明を続け、現在の処分は当初より緩和され、事業を今後も継続することが叶っています。
(保険会社を通じて財務局にも現在の処分が受理されています)

 正直、廃業を突き付けられたときには、頭が真っ白になりましたが、すぐに対処策(別法人の立ち上げ準備等)に取り掛かることができたのは、父の突然の死を乗り越えた賜物だと思いました。

 今回の件に関して周囲へ伝えたいこと、そして教訓になったことが本当にたくさんあります。

 全ては伝えきることが叶いませんが、どうか一人でも多くの方に届くことを願ってやみません。

保険代理店はいつだって契約者の味方。でもね、、、

 我々保険代理店は、お客様が保険料を保険会社に支払っていただくことで、その中から手数料収入をいただいています。保険商品は事故やトラブルがあり、それが保険事故として適用された場合に限り、お客様に商品を使っていただくことができます。

 なので、本当に何も起こらないまま保険料だけ支払っていただく方も大勢いらっしゃいます。だからこそ有事の際は、1日も早く保険金を受け取っていただくことで、保険商品を使っていただきたいのです。

 正直、損害保険においては約款の解釈によって有無責が反転することもあるため、いわゆる「グレーゾーン」みたいなところあります。私も過去何度も保険会社のサービスセンターに行き、直接担当者と折衝をすることで、お客様へ保険金を届けることがありました。(虚偽の報告をしたり、免責事項が覆ることはありません。)

※ここで言うグレーゾーンとは保険会社担当者との解釈の違いです。約款の該当箇所をこう解釈したら、こういう補償ができませんか?ということを担当者と擦り合わせることが弊社の折衝です。決して無理なお願いや、こちらの願望だけを通してもらうようなことはしません。

 お客様が思っている以上に、我々はお客様に保険金をお届けしたいという気持ちが強いのです。

 しかし、我々も保険会社の定めるルールに則って業務を遂行しています。補償の対象外(免責)になってしまうことに関しては、どうやっても保険金をお届けすることができません。だからこそ、保険契約の際に免責事項だけは必ずよく聞いておいてほしいのです。(永遠の課題)

 その一線を越えて、我々や、目の前の担当者に無理強いをすることはできればやめてもらいたい。ルールを破る者は最終的に敗者となる。これは歴史を少し勉強すれば分かることです。

その一線を越えて私が見たものとは

 本件はその一線を越えてしまいました。正直私の心の弱さもあり、解釈の甘さもありました。しかし、決して許されることではありませんし、二度と我々も遭遇したくありません。

 もしもあなたが目の前の担当者に無理強いをしたならば、その担当者、その家族、会社、そしてその会社に勤める社員、その家族みんなが不幸になります。それほど保険金不正請求というのは自分自身、そして周囲に及ぼす影響が大きいのです。(詐欺罪に該当すれば重たい処罰を受けます。)

 廃業を突き付けられた瞬間、妻や家族、そして社員、社員の家族の顔が脳裏をよぎりました。絶対守らなくてはならない人々が困り果てる姿が鮮明に浮かびました。

 あなたはそこまで多くの人たちを不幸にしてまで、保険金を受け取りたいですか?それで本当に幸せですか?

 こんなnoteを見ている方ならばそんなことは決して無いとは思いますが、お金が絡むと人が豹変する姿を過去何度も見てきました。保険金が支払われないことで縁が切れてしまった方もたくさんいらっしゃいます。

 我々はその度に説明の質を上げ、アフターフォローによる、解釈の違い、情報の非対称性を埋めることに尽力しています。

 忘れないでください。我々保険代理店はいつだってお客様に保険商品を使っていただきたい。届けられる保険金は1円すら漏れが無いように、お届けしたいのです。

売上が無くなる恐怖で初めて分かった役員報酬の大切さ

 私は過去5年間役員報酬を上げずに固定していました。社員の給与を上げること、繰越利益剰余金を蓄積することにも重きを置いていたため、自分自身は生活に必要な金額を役員報酬に設定していました。

 しかし、今回の出来事があって、会社の売上が止まり、廃業を余儀なくされたときに自分自身の手元にお金が無いことがどんなに家族を不安にさせることか。半年前、私には授かったばかりの子供が妻のお腹の中にいました。

 この時に初めて役員報酬の金額の重要さを知りました。自分の他者を優先する考えは自分でも素晴らしいと評価しています。しかし、それだけでは大切な家族は守れません。やはり役員報酬は自分の浅はかな簡単な考え一つで設定していいものではないと思いました。

 会社の役員、経営者とは事業に関する全ての責任を負います。自分を含め、社員の不祥事で損害賠償責任を負い、全てを失う覚悟が必要です。その時に家族を守ることができるのは、私財だけなのです。

廃業していたらどうしてたの?という質問

 当初、不幸中の幸いにも今回の処罰を受ける対象は有限会社オーライフと私だけでした。つまり、社員の資格は保たれるため、別法人を立ち上げて、代表者を立て、代理店登録が済めばあとは契約を移管して、私は実務に携わらずに裏方に回ればよかったのです。

 社名は株式会社オーライフ、代表者は妹。これに加えて説明義務をしっかりと果たすことによって、90%以上の売り上げは維持できると想定し、社員も今まで通り収入を減らすことなく、働けると思いました。私はもちろん無給で1年引継ぎに尽力し、責任を取って完全に退くつもりでした。

 結果的にはそうはなりませんでしたが、ここまでの根回しをしつつ、半年間、保険会社と話し合いを続けてまいりました。今は現在の結果、処分にも納得しており、今後の改善に向けて対策に全力で取り組んでいます。

実は不安は一瞬だけだった

 代理店登録の解除、募集人資格20年間停止というのは、死刑を宣告されていることに変わりありません。つまり、売上が0になるということです。いくら財務内容が良くとも、我々のような中小零細企業の内部留保はたかが知れています。

 売上が止まったら数か月、人件費等の固定費を払うことによって、あっという間に底をつき、倒産になります。

 ただ、その状況下においても不安になったのは一瞬でした。それは常に「最悪の状態をシミュレーション」しているからです。

 会社経営において最悪の状態は、売上が止まり、従業員に給与が払えなくなることです。なのでこれさえ解決できればあとは自分の考え方次第で可能性は無限大になります。

 もし今回のことで売上げが止まったならば、すぐに人件費以外の固定費をカットして、社員の次の働く先が見つかるまで内部留保で耐え、足りなければ私財を投入。内部留保だけでも半年は耐えられるため、そんなに心配は大きくありませんでした。

自分の家族はどうするの?

 社員は大丈夫だとしても自分の家族はどうするの?これも不安は一瞬で、お腹の中の子のことも含めて、「大丈夫」だと思っていました。

 それはこの約9年間に保険という無形商品の営業から逃げずに向き合ってきた結果、どんなものでも営業で結果を出せると自信があったからです。

 本当に有難いことに、全ての保険をお任せいただくだけでなく、会社の財務のこと、家族のことなど、身内にも相談できないようなことでも何でも相談していただけるようになったらからこそ、自分に自信が持てるようになったのです。

 だから自分はどこにいっても家族を養っていけるだけの稼ぎは作れる。どんな状況下でも生き残れると思ったからこそ不安はありませんでした。(一時的に生活水準が落ちることさえ許容できれば怖いものは無い)

まぁ結局は伊東市に残って頑張りますよということ

 色々と書いてまいりましたが、結局は廃業とはならず今まで通り伊東市に残り、地域のため、世のため人のために時間を使えることになりました(^^)

 ご心配をおかけした皆様には心からお詫びと、御礼を申し上げます。まだまだ志半ばなことだらけですので、これからも厳しいご指導ご鞭撻、そしてご支援賜りますようお願いいたします。

 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。どうか私の周囲の皆様が健康で幸せな日々が過ごせますように。


 


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