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「『作動論』としての視点を持ちながら、統治機構を中心にこれからのあるべき姿を明らかにしていきたい」 PHP「統治機構改革」研究会の報告書『統治機構改革1.5&2.0』が発表されました。

3月20日に、PHP「統治機構改革」研究会の報告書『統治機構改革1.5&2.0 次の時代に向けた加速と挑戦』が発表されました。そのサイトは以下となります。

https://thinktank.php.co.jp/policy/4920/?fbclid=IwAR3JSCwA6fyPkbXmhWxtLudFSqCeLWjjame96zkkY0UN5_wLwcadx9sBnEQ

幹事役を担われた亀井善太郎さんのご尽力のたまものですが、研究会メンバーで大いに議論した成果と思います。松井孝治さん、待鳥聡史さん、宍戸常寿さん、山本龍彦さん、砂原庸介さん、金子将史さんとの論争はきわめて実のあるものだったと思い返すところしきりです。オブザーバーとして参加された方々を含めて、厚く感謝いたします。

さて、研究会HPを見ると実に多くの方々からお話をお聞きしたものと改めて思います。福田康夫元首相、甘利明元経産大臣、古川貞二郎元官房副長官といった方々からは、貴重な情報をいただきました。記録として残しておけば、一級のオーラル・ヒストリーであったと思います。もっとも記録をとらないフリーディスカッションの意味も大きく、それらが報告書に様々な形で反映されています。

提言内容は、当面の改革として必要なもの「統治機構改革1.5」と、長期的な改革課題「統治機構改革2.0」と振り分けています。この振り分けを比べてみますと、検討すべき改革が立体的に見えてくると同時に、日本の統治機構の変容すべき大きなプロセスも浮かび上がります。

当面は衆議院を「アリーナ型」に、将来的には参議院を長期的課題を検討する場にすべき、当面は政府中枢の「コア・エグゼクティブの一層のチーム化」を、将来的にはアメリカで提唱されている「プーリング」型の総合調整を導入すべきといった振り分けによって、これから進めるべき「改革の政治」とは何かが見えてくるようにも思います。

また私自身は研究会で、HPにあるように、「改革した制度そのものばかりではなく、これに伴う様々な「作動」が具体的にいかなるものであったのか、作動の過程を全体としてとらえ、歴史のダイナミズムの中で把握する」という報告をしたのですが、「はじめに」の末尾はこう書かれています。

 政策を考える上で、制度ばかりに着目する見方もあるが、むしろ、制度がその設計の意図通り動くことは稀である。むしろ、これまでのものの見方が継続し、別の制度の影響や意図せざることによって、運用上の変化、さらには弊害も出てくることが多い。実際、いまの政治を見れば、政権交代によって人の入れ替えを2回やってみたが、それだけでは、当初意図したとおりに「変わる」に至らず、むしろ、野党は弱体化し、次の政権交代の可能性は見出せない現状に至った。そうした「作動論」としての視点を持ちながら、統治機構を中心にこれからのあるべき姿を明らかにしていきたい。

つい先日報告書を受け取ったばかりでもあり、「作動学の観点からの改革」という伏流がどう仕込まれているか、もう一度考えつつ読み直してみたいと思っています。

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