九印のモバイルケース

 「九印」というブランドがあって、そこのモバイルケースを出始めの頃に買って15年近くずっと愛用してきた。
 今は「seto」というブランド名に変わっているのだけど、こいつはまだ「九印」時代の頃のもので、今はもう売ってない。現在売られている同じ商品よりやや扁平で、尻尾にもフックがついているのが特徴だ。
 生物に見立てられているので、現行のモバイルケースは10年以上の進化の過程でより使いやすくなり、背中が盛り上がり尻尾のフックは退化した。目玉も金属のボタンだったのが、プラスチック製になっている。
 現行商品の、容量を増すために作られた背中の縦線がちょっと嫌で、両生類的なフォルムの(進化した方が爬虫類とするなら尻尾がなくなるのは少しおかしいけど)この原始的な姿のモバイルケースのほうが好きだったので、薄汚れても使い続けていた。だが、このタイプは絶滅したのでもう手に入らない。
 尻尾だけでもぶら下げることができるのが、なかなか素敵で、使い勝手もよかったのだが……。

 手足のフック同士をかみ合わせて、物に抱きつかせることもできる。
 その愛用品が、とうとう壊れてしまった。
 前から、ファスナーがきちんと閉まらなくなって外れそうになっていたので、口の端を糸で縫い止めて最後まで開かないようにしていたのだが、とうとうその手前でチャックの布が切れ、金具が外れてしまったのだ。
 口を閉じないモバイルケースは、中身がいつ落ちるかわからないから、ちょっと危険だ。汚れてはいるが布地は頑丈な素材なので、他は支障がないだけに実に残念……。
 三つのinfobarと、つい最近変えたばかりのTORQUEまで四台の携帯電話を守ってきてくれた相棒を引退させるのは、とても悲しい……。
 今後は、「いつかこんな日が来るだろう」と九印がsetoに変わる前に買ってあった(つまり使わずに7年以上寝かせている)交代要員のモバイルケースがあるので、そっちと交替することになる。
 新しいほうは、現行品ともちがう進化途中のもので、尻尾はなくなって目玉もプラスチック製になってはいるが、まだ背中の盛り上がりはないタイプ。
 よそ行きだし、綺麗なケースをつけていくか~などと、先日のパーティーのときだけ新品のほうを着けて行ったのだが、そのせいで相棒に「そろそろ俺は引退するか」などと思われてしまったのかも。
 そんな気はなかったのになあ。ごめんよ……。
 新しいのも10年以上持ってくれるといいなあ。

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