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このゲーム

 また自作ゲームの話をしよう。
 なんだか好きなゲームの話をしているのか、ゲームの思い出話をしているのかわからなくなってきているが……。

 高校生になって、中学校のころにつるんでいた友人たちとはバラバラになってしまった。特に、シミュレーションゲームをやっていた友人たちとは、その後ほとんど会わなくなってしまった(大きくなって地域のゲーム会なんかでも会わなかったから、他の趣味に移行してしまったのかも)。とはいえ、高校、大学と進むにつれて、よりオタク(このぐらいにようやくできはじめた用語だと思うので、あまり自分たちのことをそう呼んではいなかったが)度の高い仲間が見つかるようになるのだが。

 中学と高校で大きく違ったのが、自習の時間だった。
 中学校では先生が都合でいない場合、代わりの先生が来て、授業をしたり課題プリントを監視付きでやらされていたが、高校ではその時間中、基本的には生徒を「ほったらかし」なので驚いた。
 生徒の自主性を重んじるということなのか。とにかく、監視もなしで、教室を出ないで静かにしてさえいれば、お咎めはないのである。
 そこそこの進学校だったから、これ幸いとガリガリ勉強しているやつもけっこういたが、私は、スタンド使いが互いに引かれ合うようにして親しくなった友人たちとOUTやらファンロードやらを広げて馬鹿話したり、ポケコンのゲームに興じたり、あらかじめ自習があるとわかっているときなどは小さめのシミュレーションを持ち寄ったりして遊んでいた(SPIのタイムトリッパーというゲームが大好きだった)。

 それが、いつの頃からか「自習時間には交代でボードゲームを作ってきて、遊ぶ」ということになった。
 日本語版のD&Dやトラベラーが出る前で、英語版を遊んでいる人がいることも知らない高校一年生。ファミコンはあったけど、ドラクエは出る前の話。
 それが、自前で考えてやっていたことが、かなりRPGに近かった。
 プレイヤーは友人三人。
 ヘックスマップで仕切った大陸の地図を、好きなように歩いてもらい、別々の王国の騎士となって出世していく……みたいな感じ。あ、題材はファンタジーだった。
 広いヘックスマップには、意味ありげな絵を書き込んだりして、そこまでたどりつくとNPCが待っていたり、なにか見つかったり。もちろん、途中のなにもないヘックスではランダムで敵が出たりする。ルールをノートにひたすら書き込んでいた。出会う予定のNPCの絵を小さな紙に書いたりもしていた(出会うと、こいつがいました~と見せるわけ)。
 当時はテーブルトークRPGというものを全く知らなかったし、プレイヤー三人がパーティーではなく別々の国で冒険しているので、各人を相手になにが起こったかや、どうするのかといったやりとりを全て「筆談」でやっていた。自習中だから静かにする必要もあって生まれたシステムだとは思う。
 思うけど……。
 これがまあ、言ってみれば交互に書く小説みたいなものなんだよね。
 しかも、私は(ゲームマスターという言葉も知らなかったんで、自然とこういう役回りになっていただけなんだが)、三本のお話を、ほぼアドリブで同時に展開していく――ということをしていたわけ。
 だんだん、自習時間だけでは物足りなくなって、休みの日とかに集まって何時間も遊んだりしていた。筆談のメモ用紙だけで、ものすごい量になっていたっけなあ……。今考えると、TRPGのオンラインセッションに近いと思う。あるいは、リプレイを同時制作しているというか。そんな感じ。
 完全自作のマップやらNPCのカードやらにも色を塗って、箱も自作して一式入れて、懲りまくっていた。
 面白かったなあ。
 大学に入ってしばらくは、このゲーム世界のファンタジー小説を書いて、サークルの同人誌に寄稿していたっけ。
 あのときプレイヤーだった友人のうち二人は、今でも年に数回会ってゲームをする仲だ(疎遠になってしまったもう一人の友人が、この自習時間に作ってきた、戦後間もない広島で少年野球チームをメンバー集めから始めて、最後はライバルチームと対戦する――というゲームもまた、死ぬほど面白かった)。
 さすがに、友人たちとあっても、このゲームはやらないけど。
 でも、引き出しの奥に大事にしまってある。

 あの自習時間なしに既存のTRPGに出会っていたら、ゲーム人生もちょっと違っていたかもしれない。D&Dとかトラベラーとか知ったとき「そっか、ゲーム進めるときは会話でいいんだ。なんで書いてたんだ?」とか思ったもんなあ。

 これもまあ、やりたいけどもうできないゲームのひとつかも。

#weloveGAME

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