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50km/hの自転車「VanMoof V」が目指す未来

10月13日の真夜中(日本時間)、VanMoofが新しい電動自転車「VanMoof V」を発表した。

VanMoofといえば、「自転車界のApple」なんて呼ばれることもある注目のeバイクメーカー。現行機種の「S3 / X3」はシンプルで美しいデザインを持ち、随所に画期的なアイデアが散りばめられている。Appleが4月に盗難防止用タグの「AirTag」を発表したとき、同時発表された3つのサードパーティ製品のひとつに選ばれていたから、「やっぱAppleもVanMoof好きなんだなー」なんて思ったものだ。

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最高時速50kmのモンスター自転車

そんな彼らが発表したVanMoof Vは、未来的な見た目もさることながら、前後タイヤに合計1000W(たぶん各500W)のモーターを内蔵し、2輪駆動で最高50km/h(資料の記載値。発表では60km/hといってた)という速さで走れるモンスターeバイクだ。ちなみに1000Wといったら、SuperSoco TCZERO10Xなど、原付二種枠の電動バイクや電動キックボードと同じくらいの出力。どっちも乗ったけど、パワー感は完全にバイクだ。

発表会では「最高速度は各国の法律に合わせて設定される」なんていっていたが、こんなに高出力な電動自転車、自転車扱いでオッケーとする国はほとんどないだろう。ヨーロッパでも最高時速25km、出力250Wあたりが一般的で、緩いところでも最高時速32km、500Wくらいのようだ。日本の電動アシスト自転車はといえば、最高時速は24kmだが、そこに向けて徐々にアシスト比率を減らさなければならないというルールがある。

つまりVanMoof Vのポテンシャルをフルに発揮させようとしたら、現状は免許・ヘルメット着用のバイク扱いにするしかない。あるいは、その性能の大部分を封印しておとなしく走るかだ。そんな中、あえて製品化の1年以上前に発表した理由は、「ルール変更にチャレンジするため」なのかな、と思う。

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キーワードは「ジオフェンシング」

発表会の中で共同操業者のティーズ・カーリエ氏は「長期的には、こういう乗りものに合ったルールづくりをすべき」「そのために自治体と協力していきたい」という趣旨の発言をしていた。そのときキーワードとして挙げたのが、「ジオフェンシング」だ。GPSなどの位置情報を使って街に仮想のエリアを設定する技術で、例えば「幼稚園や小学校の近くでは最高時速を20kmに制限する」「歩行者が多いエリアではアシストをカットする」といったことができる。

電動キックボード最大手のBIRDは、すでにこのジオフェンシングを活用していて、学校や病院のそばで最高時速を制限したり、エリア外に出たら停止させたりしている。自転車に限らず、未来のモビリティでは、この技術をうまくルールに組み込むことが重要になるだろう。(なんか今みたら、センチメーター級のジオフェンスで歩道走行を防ぐ技術まで発表してる)

新製品を企画するとき、普通は既存のルールを起点に考えてしまうもの。でもVanMoofは、将来のモビリティのあるべき姿を起点にデザインし、環境のほうを変えていこうとしている。「こんな電動自転車が、現状のクルマやバイクを置き換えていくべきだ」という理想から出発している。

そんなビジョン・ドリブンな「VanMoof V」の発表を見て、さすが「自転車界のアップルだなあ」と感心してしまった。

(VanMoofの自転車は)世界中で約20万人の ライダーに愛用されています。

でも、これはまだ始まったばかりです。

世界一成長速度の速いE-バイクブランドとして、 VanMoofは、都市におけるモビリティの未来を再定義し 、次の10億人を自転車に乗せることを目指しています。(VanMoofのプレス資料より)

↓発表会ビデオ


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