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とくとくの水麦士一茶/梅の木のの巻

Berjaln-jalan, Cari angin.
     05

 物かく髫髪いたき見る也
名月の半蔀淋し湯上りに          一茶

初オ五句、月の定座、名月の句です。

     〇

名月の めいげつ・の。月照。

半蔀 はしとみ、観世では「はしどみ」と。能の名曲。

淋し さみし、寂しさの極み、心象の核とでも。

湯上りに ゆあがり・に、この湯は他でもなく道後の湯のこと、その湯上りに。(一茶の旅の記録にも)

     〇

 ものかくうなゐいだきみるなり

めいげつの はしとみ さみし ゆあがりに

歌仙という文藝が見せる<幻>を、不調法ながら解きおこしてまいりましょう。

一つ目には、月に夕顔、旅の湯の淋しさよ。と詠う一茶の旅日記。
二つ目には、月に半蔀、謡も淋しヨーポンポン、おっと湯冷めのせぬように、と。夢幻能に誘っていたのです。
三つ目には、月に夕顔、源氏物語のもののあはれ、湯は道後、ずいぶん遠くにきたものだ、と云ったところでしょう。

従って、前句「髫髪」は「若紫」、付け句「半蔀」は「夕顔」で、「源氏物語」ということだったのですね。

     〇

謡「半蔀」に

序ノ舞
シテワキ二人「折りてこそそれかとも見め。
地「たそがれに。地「ほの%\見えし。花の夕顔。/\。/\。
シテ「終の宿は知らせ申しつ。
地「常にはとむらひ。
シテ「おはしませと。
地「木綿付の鳥の音。
シテ「鐘も頻に。
地「告げ渡る東雲。あさまにもなりぬべし。明けぬ先にと夕顔の宿明けぬ先にと夕顔のやどりの。また半蔀の内に入りて其まゝ夢とぞ。なりにける。

と。

5.11.2023.Masaufumi.

余外ながら、こんな歌が、

洗かみの雫こぼれて夕顔にほしの色あるたそがれの庭   律子

帝劇の女優、森律子の歌です。

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