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鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻

     16

虎吼る古き霊屋の秋の月
 霧吹はれて花紅葉ちる       一茶

初ウ十句、霧の句ながら、花の座を引き上げて月の座に寄せた一茶の句。

     〇

霧 きり、季語は秋。

吹はれて ふき・はれ・て。風が吹き霧が晴れて、あたりが明るくなる。「て」は、完了の助動詞「つ」。

花紅葉 はなもみぢ。春秋の美しい自然のながめを賞賛した詞、歌仙では雑の正花。

ちる はなも散れば、もみぢも散る。

     〇

とらほえる/
      ふるき たまやの あきのつき

 きり ふきはれて はなもみぢ ちる

「霊屋の秋」に「霧吹はれて」と付け、これでこの句を秋にしておいて、さらに月の座「秋の月」に「花紅葉」を詠みこみ花の座を引き上げていたのです。ここに、並の俳諧師では成し得ない展開=歌仙の運びを見せていたのです。それは、とりもなおさず、樗堂の<絶句の月>に応えた俳諧師一茶の<賞賛の花>でもあったのですから。

     〇

秀歌に

秋の月山辺さやかにてらせるは落つるもみぢの数を見よとか  よみ人しらず (「古今和歌集」秋下 289)

がありました。

23.10.2023.Masafumi.

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