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樗堂一茶両吟/蓬生の巻 23

   あたら花田の帯に泥
  風そよく信太の夕の夏すゝき         樗堂
 名オ五句、爽やかな夏の風が通り過ぎてゆくよ。
     〇
  風そよぐ
   薫風が頬を撫でゆく。
  信太の
   信太の森の
  夕の
   日暮れ時
  夏すゝき
   夏の薄が揺れてます。
     〇
 あたら
 はなだのおびに
 どろ
 かぜそよぐしのだのゆふの/なつすゝき
 花田に信太を付け合わす、この単純な歌仙の営みから、鮮やかな夏の情感をあぶり出していたのです。
     〇
 人それぞれに始まりの時と場所に向かわせるように、吹く風は<信太>という詞を核にしながら、この句は、どこか遠くの、遥かむかしの草原へと誘っていたのです。列島の南の島々に「若夏(わかなつ)」という詞があります。この句には、そんな季節を想起させる力強い<草の句>になっていたのです。
 「おっかさん、私を置いといて、いなくなっちゃうんだもの。さびしいわよ、辛いわよ。」
 「何言ってんだい。弱音を吐くんじゃないよ。あんたに限って、何があっても大丈夫さ。」
■画像は、名嘉睦稔「風の伝言」。

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