とくとくの水麦士一茶/梅の木のの巻
Berjaln-jalan, Cari angin.
01
梅の木の心しづかに青葉哉 一茶
発句、寛政七年春、松山の麦士を訪ねた一茶、挨拶の句。
〇
梅の むめ・の、花はなくとも、梅は梅。
木の き・の、木姿に。
心 こゝろ、情感の<真ん中>に、どすんと。
しづかに 閑・に、おだやかに、「心しづかに」で一語。
青葉哉 あをば・かな、梅の青葉、桜で云えば遅桜に近い語感。かなで詠嘆の切れ。
〇
むめの
きの こゝろしづかに
あをばかな
一茶が歌仙の挨拶に<梅>を選んだのには、なんらかの理由があるに違いない。このあたりを探ってみましょう。
〇
石手寺の境内に「花入塚」が建てられたのは明和の年のことだったのですが、この芭蕉塚の建立、俳誌「花入塚」の発刊が、松山の俳諧をよくする人々の譽でもあったことが知られています。
連中こそりてこの冬一基を築き、伝来の懐紙一巻を納めて花入塚と号け、正風の開祖を祭る事とはなしぬ 俳誌「花入塚」
序にいう「伝来の懐紙」とは、「壬申十二月廿日即興 打ちよりて」の巻。
その立句は、
打ちよりて花入探れんめつばき 芭蕉
と。
〇
と、すれば、一茶の「梅の木の」の挨拶は、麦士ばかりでなく、蕉風を慕う松山の人々への挨拶にもなり、この句が、尚一層ひき立ってくるようです。
5.11.2023.Masafumi.
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