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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻

En écoutant la chanson......
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手合の薬のみ飽物おもひ
 妾の指図の家建し月           樗堂

初ウ八句、うむ、なになに、月の定座に妾宅とや。

     〇

妾の せふ・の、めかけ、てかけ。亭主に妻の存在がありながら、身の周りの世話をする別の女性のことをさす。

指図の さしづ・の、指図を受けるのは亭主の方。(妾は、妾で自立した女性であったことを示していたのです)

家建し いへ・たてし、場所も建坪も、調度も庭も、小さいけれど、それはそれで行き届いたものだったのでしょうね。

月 つき、そこに月が。

     〇

てあはせの くすりのみあき ものおもひ

  せうのさしずのいへたてし つき

ものおもひの末、ややあって、妾宅で見る月を詠んでいたのです。もとよりこれは、歌仙という文藝が描き出した幻影に過ぎないのですが、いやはや、何とも、樗堂こと廉屋の専助さん、ここまで云っちゃいましたかね。

     〇

その経緯をば

◇「藪越や」の巻、名ウ一句、二句に

ぬらくらと番日怠る病あがり      樗堂
 本取筋はけしきばむ頃        一茶

◇「初雪や」の巻、初ウ九句、十句に

虎吼る古き霊屋の秋の月        樗堂
 霧吹はれて花紅葉ちる        一茶

◇「降雪に」の巻、初ウ七句、八句に

手合の薬のみ飽物おもひ        一茶
 妾の指図の家建し月         樗堂

要らぬお節介が過ぎました。行く末々に差し障りがあってはなりませんので、これにて。

30.10.2023.Masafumi.

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