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仕切り直し樗堂一茶両吟/藪越やの巻

     九

 水汲む礼に水菜送りて       一茶
夕がすみ煩ふ人を思ひそめ      樗堂

初ウ三句、<あらおいたわしや>と思う気持ちが恋となり。

     〇

夕がすみ 春の季語。

煩ふ人を 病んでいるひと、煩悩の煩で<わづらふ>と読ませていました。

思ひ染め かの人への想いがつのりはじめていたのです。

     〇

きたたにの
 たけふくのきば おちかゝり

 みずくむれいに
 みずなおくりて

ゆふがすみ
わづらふひとを おもひそめ

歌仙の運びは、北山にかかる夕霞のような恋に発展していましたので、水の贈答の句は、薬膳を整えるためのものと見定めるべきだったのかも知れませんね。

     〇

句意からすれば京都あたりを想定すべきでしょうが、<煩ふ人>を想う文芸は江戸ものにも類例がありました。その代表的のものとして、歌舞伎では「助六」(紫の鉢巻き)、落語「居残り」(品川宿での療養)などが知られていました。

近代になりますと「母乞い」ものとして、映画「となりのトトロ」がありましたね。

畦道を玉蜀黍と勇み行く        ぶんぶん
もふもふのふわりふわりのほかほかの はるかの猫

ほぼ日刊イトイ新聞「土屋耕一ゼミ『となりのトトロ』の物語を 五七五の俳句で追いかける」から。

26.8.2023.Masafumi.

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