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鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻

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 煩ふ馬の薬問ひけり
井一ツをもやひ長屋の薄月夜      一茶

名オ九句、街中の暮らしに引き寄せて月を詠む。

     〇

井 ゐ、ゐど、井戸。

一ツを ひとつ・を、だから、噺に花が咲く。

もやひ 催合い、共同でひとつことをしたり、ひとつのものを持ち合うこと。列島の人々の結衆の基本論理、あるいは倫理。

長屋の ながや・の。長家は、元々山城の麓に建てられた根小屋で休憩所だったものが、後に人々が城下に暮らすようになるとここに住まうようになりました。後には表長屋もあれば、裏長屋もあったのです。

薄月夜 うすづき・よ、貞徳がいう「もち月の用意をするやうす月よ」の意。月がでている夜のことです。

     〇

 わづらふ うまのくすり とひけり

ゐひとつを もやひながやの うすづきよ

<人も馬も>から、市中の<もやひ長屋>に移し、人々の暮らしぶりをドキュメントしようとしていたのです。月の座をここに引き上げていました。

     〇

俳諧の連句に

 葛籠一荷にこもる凉風        宗因
さし出る長屋住居の暮過て       似春  (宗因七百韵)

と。

     〇

また

  長屋割付られし人の 有明の月に 酒賣不許入内とて
  なきあかしたり

水窓の綱もきるゝ氷柱哉        其角

  水窓は外より水を汲入 うちより水わたしたる中窓也
  必水瓶の上にあけたれば 都の住居には見ず 是東国
  のせばき家のあらましなり

園女「菊の塵」

と、ありました。(この記述は、園女が江戸入りして間のないころのことです)

25.10.2023.Masafumi.

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