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風早ハ兎文一茶両/門前やの巻

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 ざんじ吞干す一樽の酒
初雪の七言対句おもしろく   一茶

名ウ一句、名残り裏入りは七言対句で冬。

     〇

初雪の はつゆき、その年の冬初めて降る雪のこと。あるいは、襲の色目の名、謡曲に初雪がありました。

七言対句 ななごん・ついく。七言は七言絶句・七言律詩の七、対句は同じ構成をもつ二つの句のこと。

おもしろく 面白く、形容詞「面白し」の連用形。

     〇

 ざんじ のみ ほす ひとたるのさけ

はつゆきの ななごんついく おもしろく

酒に詩、遊興の贅を尽くした対句の饗応、一茶の句をもって、この歌仙いよいよ名ウ入りとなりました。

     〇

思えば、一茶「西国紀行(寛政七年紀行)」の起首は、乙卯歳旦於専念精舎でした。

  乙卯歳旦於専念精舎

今日立春向寺門 々々花開愈清暾
入来親友酌樽酒 豈思是異居古園

元日やさらに旅宿とおもほへす

と。

     〇

讃岐から伊予風早まで、一茶はどのような対句を思っていたものか ? こんな詩がありました。

  寄長秀士

邂逅幸忘爾汝分
江城覊思奈何君
夢迷關北鵞湖雪
望斷海西龍野雲
雙鯉水長勞間信
孤鴻天濶歎離群
客中知有夜難過
梧雨蕭絛窓外聞

新井白石の七言律詩、題下に作者の自註があり、そこには「秀士は本と信州の人、曽つて官に播陽に従う。而して今江東に客たり。故に第三・第四句に爾か云う。竜野んる者は播陽の地名なり」と。

17.10.2023.Masafumi.

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