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鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻

     28

井一ツをもやひ長屋の薄月夜
 娘やりたき星の陰言         樗堂

名オ十句、星月夜、隠し切れない隠し事。

     〇

娘やりたき むすめ・やりたき、親心。

星の陰言 ほし・の・かげごと、星の影は、想いを寄せる二人の逢瀬をさす詞。(願い事も、陰言も、隠したところで皆々承知、だって同じ水汲む長屋だもの)

     〇

ゐひとつを もやひながやの うすづきよ

      むすめやりたき
      ほしのかげごと

月夜に星を付けて、星月夜のなかで繰り広げられている世間噺を句にしていました。誰がどうしようとお構いなし、でもね、切った張ったは御免だよ。

     〇

星合に

年をへてすむべき宿の池水は星合の影も面なれやなむ 長家
七夕のと渡る舟の梶の葉に幾秋書きつ露の玉章    俊成

など。   

二句唱和に

   殿上のをの子ども 桂川に逍遥し侍るけるに
   夜に入りて帰るとて川を渡り侍るに 星の影
   の水にうつりて見えければ
水底にうつれる星の影見れば      前大納言公任
   と侍るに
 天の戸わたる心地こそすれ        実方朝臣

『菟玖波集(下・巻十四)』

と。

     〇

曾良「俳諧書留」に

   直江津にて
文月や六日も常の夜には似ず         はせを
 露をのせたる桐の一葉      石塚喜衛門 左栗
蜑の小舟をはせ上る磯             曾良
   <中略>
   餞別
行月をとゞめかねたる兎哉           此竹
七夕や又も往還の水方深く           左栗
   <中略>
   七夕
荒海や佐渡に横たふ天河             翁
   西濱
小鯛さす柳涼しや海士がつま           同

「おくの細道」余話。「星の影」は、文月の六日、七日の民俗伝承に深く関わっていたのです。

25.10.2023.Masafumi.

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