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風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻

     02

門前や何万石の遠かすミ
 野梅に留ん其轡面       兎文

脇句、旅の客を野梅で持成した亭主の挨拶。

     〇

野梅に のうめ、やばい。香のよい白色の花をつけ、木肌が黒く荒れ、葉目も多く、枝が細かく出るので盆栽に適していました。

留ん 「とどむ」と「とめる」の二義。

其轡面 其は強調、轡は馬具。なんと凛々しい轡面であることよ!と、称賛していたのです。

     〇

もんぜんや/
      なんまんごくの とほかすみ

 のうめに とめん
 その くつわつら

亭主兎文の脇句は、「何万石」に「轡面」で応じ、旅人を白梅の香で迎えていたのです。

     〇

句の秀歌は謡曲「鉢木」です。

シテ「さやうに思し召し候はゞ。何とて以前には承り候はぬぞ。いやいや此大雪に遠くは御出で候ふまじ。某追附き留め申し候ふべし。
なう/\旅人御宿参らせうなう。
余りの大雪に申す事も聞えぬげに候。痛はしの御有様やな。もと降る雪に道を忘れ。今ふる雪に行方を失ひ。一処に佇みて。袖なる雪を打ち払ひ打ち払ひし給ふ気色。古歌の心に似たるぞや。駒とめて袖うちはらふ陰もなし。
詞「佐野の渡の雪の夕暮れ。かやうによみしは大和路や。三輪が崎なる佐野のわたり。

と。即ち、

駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮れ  定家

新古今集に。

     〇

「鉢木」は、一夜の宿を乞うた旅人に、梅の鉢の木を断ち暖を取ったという名曲です。

其角『雑談集』に「諷は俳諧の源氏なりと」とありました。

25.9.2023.Masafumi.

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