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風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻

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 蝶まつはるゝ東下りに
真柴焚く伏屋の烟春深く     兎文

名残表一句、懐紙は改まり名残に、平句ながら凛とした句姿で詠まれていました。

     〇

真柴 ま・しば、まは接頭語、柴の美称。「お爺さんは柴刈に」のしば、山野に自生する雑木または草のこと。「折りたく柴の記」は新井白石の著述。

焚く 火にくべて燃す。

伏屋の ふせや、屋根の低い小さな家。

煙 ときに「煙が目にしみる」ことも、、、、、、

春深く 春深しは季語。春惜しむ、行く春、春愁とも。

     〇

 てふ まつはるゝ あづま くだりに

ましばたくふせやのけむり はるふかく

涙ながらに語られていた前句に、「伏屋の煙」とさりげなく付けた俳諧。このあたり、へそ曲がりと云えば臍曲がり、悲しくてやりきれないなんて、決して素直には云わないのですから。

     〇

源氏に

 春深くなりゆくままに 御前のありさま いにしへに変らぬを めでたまふ方にはあらねど  静心なく 何ごとにつけても胸いたう思さるれば おほかたこの世の外のやうに  鳥の音も聞こえざらむ山の末ゆかしうのみ いとどなりまさりたまふ。
 山吹などの 心地よげに咲き乱れたるも うちつけに露けくのみ見なされたまふ  他の花は 一重散りて 八重咲く花桜盛り過ぎて 樺桜は開け 藤は後れて色づきなどこそはすめるを その遅く疾き花の心をよく分きて いろいろを尽くし植ゑおきたまひしかば 時を忘れず匂ひ満ちたるに 若宮
 「まろが桜は咲きにけり いかで久しく散らさじ 木のめぐりに帳を立てて  帷子を上げずは 風もえ吹き寄らじ」
 と、かしこう思ひ得たり、と思ひてのたまふ顔のいとうつくしきにも、うち笑まれたまひぬ。

「春深くなりゆくままに」「幻」『源氏物語』

     〇

あるいは、

They asked me how I knew
My true love was true
I of course replied
Something here inside,
Cannot be denied.
They said someday you'll find,
All who love are blind
When your heart's on fire
You must realize
Smoke gets in your eyes.

So I chaffed them and I gayly laughed,
to think they could doubt my love.
Yestoday
My love has flown away,
I am without my love.

Now laughing friends deride
Tears I can not hide
So I smile and say
“ When a lovely flame dies
Smoke gets in your eyes ”

作詞 Otto Harbach 作曲 Jerome Kem "Smoke gets in your eyes"

     〇

歌仙は名残の折に入りました。一茶兎文の二人は、初折では二句読みの膝送りでしたが、これより一句読みの両吟で読み進めてまいります。

12.10.2023.Masafumi.

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