仕切り直し樗堂一茶両吟/藪越やの巻
廿五
蜘の尿する短檠の陰 樗堂
野送りの跡を清むる鈴の声 一茶
名オ七句、葬送の鈴の音、歌仙は相聞から挽歌に転じていました。
〇
野送りの 野辺送り。多くは念仏組の人々によって行われていました。
跡を 葬送儀礼が終わると
清むる 穢れを払う儀礼、伊予では「ブクバラシ」。
鈴の声 念仏の声や鈴の音が響いていましたよ。あたりには、、、、、
〇
くもの
ばりする たんけいの
かげ
のおくりのあとを きよむるすずのこえ
蜘の予兆句から、野辺送りの句に転じ、歌仙は、恋の華やいだ場から葬送あとの寂寥の場へと移されていたのです。
〇
この句は、人の生死に伴う儀礼が、地域の<共同体>によって担われ社会化されていた時代のことです。
人が亡くなれば、近隣の人々が喪家にかけつけ、葬儀を手伝うのが<当たり前>だったにしても、現代の人々からすれば、それらはもう分かりづらい習慣であり、葬儀の景観になってしまっているのかも知れませんね。
俳諧に
枯原やけふをこころの喪の名残 丈草
うの花や蛙葬る明り先 一茶
句に
喪を終へて喪へ生涯の鴉らと 鷹女
葬り果てゝ秋ぞら深き坂下る 斌雄
伊丹十三監督の映画「お葬式」がありましたが、もう遠い昔のことになってしまったようです。
11.9.2023.Maafumi.