見出し画像

クッキークラムは3種類

NYチーズケーキが好きだ。ベイクドチーズケーキなのに濃厚なレアチーズケーキのようななめらかさ。トップレイヤーに白いサワークリーム。ケーキの下にはザクザクのクッキークラム。

Starbucksを始め、行った先であれば注文して食べるけど、なんか違う、食べたいのはこれじゃない、こういう、コストの味がするNY風チーズケーキじゃないんだよ、と思う。当たり前だ。わたしが一番好きなのは、自分の持っているレシピの中でも1970年代のコストやカロリー、ついでにグルテンフリーの概念のない時代のものだからだ。15×15cmのスクエア型にクリームチーズだけで450g入っているレシピだ。ここに生クリームやサワークリームもどしどし入るので、ベイクドチーズケーキとして多少水分が蒸発しているはずにも関わらず、出来上がりの重量は1kg近くになるレシピだ。

元々は、旧防衛庁の並びにあったユダヤ系レストランのマダムのレシピだ。作って教えてくれたのは別の人だが、マダムのお話もしてくれた。

この時代のお菓子のレシピはとにかくリッチで、8個のカスタードプリンを焼くためにバニラビーンズが1本使われていることもあった。お菓子のレシピの贅沢さ、世の中の味の好みの変遷は日本経済の流れとリンクしている。論文が書けるほど自信がある。もう誰か、そういう論文書いているはずなんじゃなかろうか。探して読んでみたい。

あと、陶芸の世界でも、世の中が不景気になると黒い器が流行りだす、と聞いたことがある。これは小耳に挟んだ程度なので、どうなんでしょうか。

NYチーズケーキをよそで食べるたびに、こんなコストが透けて見えるお菓子が食べたいんじゃないんだよ〜〜〜〜〜〜〜〜、お菓子は夢なんだから!!と自分で作れば良いのにそこはサボって「うーん、美味しいけど、違うんだよな」とうんうん唸っていた。

なぜ作らないのか。
めんどくさいからだ。

材料を全部ミキサーにかけて、ぶいーんと作ってもできるけど、でも手作業が作ったほうがいいに決まっている。手から気の力が入るからね、という話ではなく、ホイッパーで生クリームを揺らして水分の中に浮いている脂肪球同士をくっつけてなめらかなホイップにするのと、フードプロセッサの刃で脂肪球を切り裂くとべしゃべしゃになるのとでは、出来上がりのなめらかさが当然違うからだ。料理、それは科学。理(ことわり)を料る(はかる)と書いて「料理」。理に則り、小さな良い積み重ねが大いなる結果になる。

めんどくさいよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
使う材料は、クリームチーズ、砂糖(今時のレシピで見かけないほど入る)、生クリーム、レモン汁、サワークリーム、生クリーム。いくつも計量していくつもボウルを使う。洗うことまで考えると、めんどくさいよ〜〜。
そして生クリームが二回出てきたことにお気づきでしょうか。そう、二回出てくる。1つの生クリームにつき、1パック(200cc)を使う。15×15cmのスクエア型に生クリームが400cc使われるのだ。

こんなの、半量にする、とか、少なくても美味しい、とか、思うでしょ。
減らした途端、超美味しいケーキが、どこにでもある味になる。レシピには全て意味がある。力強い凄烈に圧倒的な美味しさには、この分量なのだ。
カロリーこそパワー(何言ってるんだ?)。

とはいえ今は令和。半世紀前は、底に敷くクッキークラムの材料は、ディジェスティフクッキーしか選択肢がありませんでしたが、今回はイタリアのビスキュイ(ティラミスの下に敷く卵白がメインの軽いクッキー)、ココナッツサブレ、近くのスーパーで見かけたアメリカのサクサクしっとりのオーツクッキーの3種類と明治の発酵バターです。このブレンドは正解。
1974年から、2024年のコーシャ風チーズケーキの完成です。

めんどくさいよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!と言いつつ、作って食べました。
パワーの味がした。めちゃ美味しかったです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?