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好きなものの話その4【タイプライター】

タイピングキイが好きなんです。だから子どもの頃から憧れです。

昔は、タイピングと言うと女性の仕事だったのでしょうか。映画「プライベートライアン」にも女性のタイピストが大勢働いているシーンがありますし、同じく映画「ヒトラー最期の12日間」でも物語が女性タイピストを採用するところから始まります。江戸川乱歩の小説「悪魔来たりて笛を吹く」でも、没落貴族の令嬢が職を手にするためにタイピングの勉強をしていますし、またも同じくフランツ・カフカの「変身」でも主人公の妹が家計を助けるためにタイピングを始めます。

とにかく私はタイピングになんともいえない憧れがあって、キイタッチしたいから文章を書き始めたという側面もあるのです(むしろ文章書きは後から来たのかもしれないと思うときがあります)。


タイピングが好きなんです

何度も済みません。でも本当に好きなんです。だからタイプライターってとってもかっこよく見えます。

またしても映画「小説家を見つけたら」では、落剥した元小説家が才能ある少年に出会ったことで、再び軽快にキイを打ち始めるシーンがありますが、あそこが私の中の

ザ・タイピング

なのですね。あの独特のかたかた言う音。今のPCでは出せないです。しかし、昔のタイプライターと言うのはとてもキイが硬くて、1日仕事使用ものなら手への負担がすごかったとも聞きます。でも、それでも憧れです。

私の父は新し物好きで、ワープロ第一世代が発売されたとき早速買ってきました。そしてそのうち第二、第三世代が発売されるたびに購入しては、要らなくなった機体を私にくれました。

私のタッチキイとの出会いは小学1年生の頃のはずで(学習机の上で叩いていたはっきりとした記憶があります、でもさすがに1年ではないかも…3年生くらい?)、それは画面のない、キイと一列の液晶と印刷機にのついた機種で、ルポというシリーズだったのではと思っています。昔のことなので、調べてもよく分かりませんでした。

その、おもちゃのように与えられた型落ちのワープロで遊んでいるうちに、私はタイピングの楽しさに取り付かれていったのです。その割には未だにミスタッチが多いのですが、なぜだろう。


とにかく、タイプライターは憧れの機械で、願いはいつか自分の専用機が1台ほしいなということです。

でも、

きっと叶わない。

そもそも今アンティーク以外のタイプライターって売っているんでしょうか。アマゾンで検索して、何件かヒットしましたが果たして実用品なのか、ただのオブジェなのか、よく分かりません。

それに、ネットで公開することがメインの今の私にとってただ紙に打つだけの機械なんて、更にかなりの質量を要するものなんで、はっきり言って手に余ります。無用の長物になってしまうこと請け合い。そもそも我が家はものすごく狭い。

でも、だからこそ、手に入らないものだからこそ、欲しくなるのが人情と言うもの。

ああ、いつかこんな風な丸いキイをかたかたいや、かちかちと叩く日が来ないかなあと思いながら、今このノートを書いています。

かたかた。

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