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次の部屋 修行編 エピローグ


 滝壺は胎児を包む子宮のように、私をすっぽりと包み込み優しい暖かさがあった。立ち位置を測ると立つべき位置には一段低くやや楕円に削られていて、その真上には細い竹筒が岩肌の中から伸びていた。 
私は衣類を脱ぎ去り褌一枚の姿でそこに立った。

 合掌し瞑目し、呼吸だけに意識を集中するようにして立ち尽くした。 雑念の大波小波が押し寄せてくるなか・・・抵抗せずにその波に翻弄される儘に、一つ一つの雑念に微笑を送り・・・過ぎゆくのを待った。
と瞼の裏に映像が走った。水が火を飲み込み、火は水の中で焔を立てている。太極図の陰陽にも似た構図は暫く私の脳裏で刻印された。
そして、此処に立った時から感じていた冷気がそうでは無くて『神氣 』だと感じ入った。
 そして、確実に意識や五感は鋭敏になり、静寂の芯に触れた。身体の意識が跳び、こゝろの想いも跳び、私は透明なアメーバ状の或る<種子>となった。 そこに至るまでにどれほどの時が経ったのか知る由も無いが、この透明なままに・・・この透明なままに・・・と念じていると・・・その瞬間一滴(ひとしずく)が私の天頂を打った。

眼・耳・鼻・口・手足の指先、あらゆる神経、筋肉、内臓が心臓の鼓動リズムと一体化して、一つの高エネルギー体となって賦活した。
私は透明な存在からエネルギーだけの存在と化した。
まだ望月の名残が漂う天空に私は跳び立ち確信した・・・今の今・・・大いなるいのちと契りを結んだと・・・・・・そして翁の笛が聞こえると・・・
次の瞬間、私は次の部屋に立ち尽くしていた。そこには・・・・・・

<来週とある海辺の町に移住します・・・故に暫く休憩いたします。
 長らくのエールありがとうございます。秋には、出来れば新しい
 か・た・ちで再チャレンジしたいです。ではでは・・・・・・>

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